短編
□秘蜜〜陰陽の誓い〜
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背中の羽に傷を負った天使の少女三成は一人で夕暮れの赤に染まりゆく町の中をさ迷い歩いていた。
天使とは普段天界に住みたまに人界の空を飛んでいるものであり地上を歩いている事など滅多に無い生物である。
もちろんこの少女、三成も本物の天使であり普段は天界で神、秀吉のために日々(本人にとっては当たり前の事のようだが)身を粉にして働いている存在だった。
だが今三成が何故地上を歩いているのかというと少しばかり時間を遡る。
今回三成は地上に巣くっている悪魔の討伐という命を受けて人界に来ていた。だが討伐する手筈だった悪魔の数が想像を遥かに上回っていたのだ。
三成は天界の中では上位の力を持つ天使であるためその力をフル活用して戦い何とか悪魔を全滅させる事はできたが三成自身の身体も無傷ではなかった。
しかも三成が傷を負った場所は天使の力の源ともなっている羽であった。
いつもならば終り次第天界に戻っていたのだが羽を怪我してしまえば飛ぶ事はできない。
地上には時々聖気の多い場所があるためそこへ行けば比較的早く傷の治癒ができると三成はそこを目指したはいいがとある問題がここで生じた。
天使は例外無く皆方向音痴なのであった。
天使は普段お互いが発する聖気等を探知して場所を把握していた。
だが手負いの三成はその力が低下しているため自力でそこへ向かおうとしたのであった。
こういう経緯があり冒頭に至ったのだった。