短編
□秘蜜〜陰陽の誓い〜
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「クソッ、歩けど歩けど同じ景色にしか見えん!」
実を言えば三成は少しずつ最寄りの聖気の強い場所、三河大聖堂へ向かっているのだが何せ方向音痴であるため本人的には同じ場所を歩いているように感じていた。
因みに今三成が歩いている場所は沢山の人が行き交う大通りである。それなのに天使という珍しい存在が歩いていても誰も騒がないのかと言うと天使は一般の人間には見えないからであった。
人間は生まれて来る時は何の汚れも無く強い聖気を持って生まれてくるのだが成長と共に聖気を失っていくため事実上天使を目にする事ができるのは赤子と数えるぐらいの聖職者だけであった。
「もうじき日が暮れてしまう…悔しいがここらで野宿でもするしかないか…」
天使は普段ならば食料摂取や睡眠を取らなくても聖気が無くならない限り死ぬ事は無いが手負いの今となっては少し事情は違った。
三成が癪に思いながら壁に寄り掛かり座った時だった。
「おや、随分と綺麗な天使だな。こんな所でどうかしたのか?」
三成の前に立ち止まった少女が三成に声を掛けたのだった。
勿論三成はかなり驚きなが少女を見た。
三成に声を掛けたのは18ぐらいの綺麗に澄んだ瞳を持った愛らしい少女であった。
三成は自分の姿を確認できている事に驚くと同時に少女の姿を見てから突然早くなった自分の鼓動に驚いていた。