短編
□魔法の鏡
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とある屋敷の天井裏の小さな部屋。
そこには誰も訪れた事はなかった。
孤独な世界の中で少女、家康は様々な夢を思い描いていた。
そんなある日古ぼけた鏡に銀髪の少年の姿が写った。
「!お、お前は…誰だ…?」
突然写った少年の姿に驚き少し鏡から離れながら尋ねた。
「…取り敢えず魔法使いとだけ名乗っておこう。」
その少年は『魔法使い』だと名乗り美しく整った顔で優しく笑った。
『魔法使い』の少年と出会ってから家康の運命の歯車は回り始め彼女の日常も少しずつ変化していった。
彼女にとっては初めての優しく接してくれる人物。
「なぁ、友達って呼んでいいか?」
戸惑いながら鏡に手を伸ばせば彼の手と重なった。
その瞬間から彼女にとっては魔法の様な時間が始まった。
優しく名前を呼んでくれた彼、重ねた手からほんの僅かな振動として伝わる彼の声。
それは彼女にとってはとても温かく家康の目にはふいに涙が浮かび頬を伝ってこぼれ落ちた。
「このままでずっとこの手を握っていていいか?」
「あぁ。」
この時から暗く寒く閉ざされていた彼女の世界が少しずつ明るく温かくなっていった。
彼女はずっと昔から寂しい世界でずっと一人で待っていたのだ。
今鏡越しにあるような優しい誰かの手を。