短編
□魔法の鏡
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『魔法使い』の少年は家康の願いを何でも叶えていった。
今まで治る事はないと言われていた病気も治り再び歩けるようになった。
今まで終わる事が無く長く続いていた戦争も終わり静かだった部屋に賑やかな笑い声が増えた。
家康はふと昔、幼い頃に夢見た事を思い出す。
立派で素敵な城があり自分はそこの姫君であった。
懐かしく感じる程鮮やかに覚えている。
そして今ではそれさえも現実になるのだ。
今まで夢見てきた願いは全て叶えてもらった。
だが最近何故か彼と会えなくなってきている事だけが唯一叶わない事だった。
やはりそれはどこか足りないという感覚で家康に伝わる。
やはりそれは鏡の向こうの彼にしか埋める事のできない魔法であった。
「この手を離さないでくれ…。」
このまま幸せなままでいられればと家康は願う。
それは他の誰でもない彼へと向ける願いだ。
だから今すぐに会いに来てほしかった。
彼に会えない日が続き家康は再び孤独を感じ始めていた。
寂しくて眠れない日が続いて優しく名前を呼んでほしいという願いが強くなる。
そんな願いを抱えながら家康は彼を待っていた。