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□すとろべりー
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学園の生徒会長の宗像は普段は生徒会の仕事をやっているが実はもう一つ大事な仕事がある。
学園内で大きな揉め事があった場合などに仲裁に入りそれを"穏便"に済ませるという仕事である。
今日も所詮子供のお遊びだがどこかのグループとグループの抗争があったしく宗像はお抱えのセプター4という組織を連れその喧嘩を止めに入った。
***
(なかなか時間がかかってしまいましたね…)
辺りが暗くなり始めていた頃。
あらかたの仕事が片付きセプター4の皆も既に撤収していた。
激しい抗争が行われたはずの広場はガラリと人がいなくなっていて先ほどまでの事が嘘のように静かだった。
と、思ったのだが視界の端にポツリと立っている生徒が一人。
あまり服も汚れていない。おそらく遠目に観察していた一般生徒かたまたま通りかかったかのどちらかだろう。
「すみません、せいとかいちょーサン。」
「…何ですか?」
いきなり話しかけられるとはあまり思っていなかったので警戒のこもった声で対応するがその生徒はへらりとした様子でこちらに近づいてきた。
歩くたびに少し癖のついた髪が揺れる。白い肌と会い重なってとても美しく見えた。女にモテそうで綺麗な顏をしている。
ぼうっとその生徒の顏を眺めていたらいつのまにか近くにそのへらりとした顏があった。
(ここまで近づいてきていたのにきづきませんでした…。)
その悔しいような情けないような気持ちを誤魔化すために一つ咳払いをして切りだした。
「冷やかしなら後にしてくれませんか?少々疲れたので。」
「チッ…。違いますよ、さっきから気になるんですよ。」
その生徒は面倒臭そうにため息をつくと指で自分の唇を指した。
「…?キスでもして欲しいんですか?」
「んな訳ないでしょうが…。唇!切れて血出てるんスよ。」
確認のため触ってみると確かに指の先に赤い血がついていた。
抗争の最中には気づかなくて当たり前くらいの小さな傷。
「これを指摘するために出てきたんですか?」
「…そうッスけど。」
「どうもありがとうございます。でもこれくらいなんとも「なくないでしょう。」
パンという擬音が今の状況に相応しい。
つまり顏を叩かれたようだった。
「⁉」
「あんたのそのキレーな顔が傷ついたら悲しむ奴だっているんですからそれでもつけててください。」
もう一度唇の辺りを触ってみるといつもとは違う感触。
(これは…)
「絆創膏、ですか。」
「…はい。」
「ふふ、ありがとうございます。」
「いーえ。」
生徒は照れ臭そうに言いそれだけすると歩き出した。
「…!待ってください!君、名前は何というのですか…?」
「伏見です。」
振り返らずにそれだけ言うと彼は去って行ってしまった。
(伏見、君。なんだか胸がモヤモヤしますね…。)