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□筆頭軍師殿の災難
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三璃紗で随一の勢力を誇る国、機駕。
国主、曹丕の側近であり筆頭軍師の肩書きを持つ司馬懿に、ある日とある災難があった。
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時は一週間前に遡る。
執務の途中、郭嘉が一本の酒を持ち出してきた事からそれは始まった。
「先生っ。これ何だと思います?」
「ん?………ただの酒瓶にしか見えんが」
陶器で出来た酒瓶を一瞥してそう言いながら、司馬懿は仕事を進める。
だが、郭嘉の顔が憎たらしい程にニヤついた。
「酒は酒でも、これはただの酒ではありませんよ。三侯の一人、雀瞬が愛したとされる古来より伝わりし秘薬ですから」
「あの雀瞬がか…?」
「はい。質屋で入手した掘り出し物ですけど…、飲みます?」
酒を注いだ杯を手にして、郭嘉は尋ねた。
正体不明の酒など飲みたくはないが、雀瞬が好んだというのだから、どんな味か吟味したくなる。
司馬懿は杯を受け取ると、それを一気に煽った。
すると、急に眩暈が起き、体が熱くなり始めた。
うっすらとしか分からないが、何やら慌てているように見える。
(周りの人間には悪戯をするくせに、可笑しな奴だな……)
そう思った時には、もう意識を手放していた。