† Novel room †


□怒らせるべからず。
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「おぁぁあああああああああッ!!」

S.D.G学園附属高校に突如響き渡った絶叫。
大きい金属音が聞こえた後、傷だらけな上にボロボロなガンイーグルが生活指導室から出てきた。
あまりの凄惨なその姿に、途中通りかかった生徒は目を瞑って行ったり見てみぬフリをして通り過ぎていく。

「…………ど、どうした、ガンイーグル…;?」

床に俯せで倒れた状態のイーグルに、マドナッグは恐る恐ると声をかけた。
彼の声に反応したのか、ガンイーグルはいきなりマドナッグの足首を鷲掴んだ。
突然の出来事に、マドナッグは思わずたじろぐ。

「ッッ;!!」
「…マドナッグ、オレ完璧に終わった」
「何がだ?」
「次のテストで平均点超えないとジル・ドレの和訳レポート1000枚書かされんだよぉおおおッ(泣)!!」
「……………………コマンダーを怒らせたな、お前」

S.D.G学園には基本的な国数理社の他に選択教科というカリキュラムがあった。理系では物理・情報処理科や生物・化学科、文系では語学・文法科、考古学・史学科。メディア・エンターテイメント科、演劇・音楽科といった感じで種類豊富である。
ガンイーグルは語学・文法科を選択しているのだが、その中でフランス語が特に苦手だった。
フランス語担当であるコマンダーサザビーがとにかくスパルタで、課題が全文フランス語でレポートをまとめてくるとか、フランス語で記載された書物を和訳するなど、かなりフランス語に関して徹底している。
今回ガンイーグルが生活指導室に呼び出されたのは、彼がその全文フランス語のレポートを忘れてしまったために激怒したサザビーによる短時間集中補習と称したお仕置きを受けていたからだった。
傷だらけなのは、スペルを書き間違えた際にハリセンで引っ叩かれたり電流が発生するライフルで撃たれたかららしい。一見するとやり過ぎなようにも見えるが、サザビーもそれなりに手加減しているという。

「オレどうしたらいい!?このままじゃまた補習行きだよ絶対ッッ(泣)!!」
「好成績を取らない限り、今後より遥かにあいつのスパルタ率が倍増するかもしれないぞ。ましてフランス語が苦手な者には特にだ」
「それオレだよもう!オレしかいねぇって!!」
「………はぁー」

泣きじゃくるガンイーグルに、マドナッグは何か対策をとらなければと頭を抱える。
とりあえず、購買でクリームパンを買ってやり一緒にテスト対策を兼ねて勉強をしたのだった。


数日後。
マドナッグは理系のためここにはいないが、ガンイーグルは文系の廊下にある掲示板の前で立ちすくんでいた。
今日はフランス語のテストの結果発表だからである。
貼り紙を見つめるその表情は、……歓喜に満ちていた。
ガッツポーズをして、どっしりと構えたかと思いきや高笑いを始める。

「よっしゃああっ!!見たか鬼サザビー!これがオレの……!」
「…確かに、苦手な割りにはよくここまで進歩したものだ」

喜びの舞をしていたガンイーグルの隣で、サザビーが不思議がりながらそう答えた。

「どわッ!?い、いつの間にかいたンスか……;」
「お前が鬼サザビーと言っていた辺りからだ。調子に乗ると痛い目に遭うぞ」
「……………おぅ;」

目を据わらせ、脅しに似たような響きでガンイーグルにそう忠告する。
テストでベスト5位になったというのに、この人には勝てる気がしないとガンイーグルは再び恐怖を覚えた。
その一方、サザビーはくすくすと笑いながらイーグルの頭をがしがしと撫でる。

「だが、苦手を克服してベスト5位の座を勝ち取ったのだ。それは褒めておこう。よく頑張ったな」
「……あ、はい………」

変な感じだが、褒めてもらって嬉しくないと思う奴はいない。
ちょっぴり照れつつも、イーグルはサザビーの撫でる手を払わなかったのだった。
そして後日、マドナッグの元に翼を持った友人がまた泣きついているとかいないとか。
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