花宴 上

□紫苑
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月世はイタチから体調のことを聞いて以来、書物を紐解く時間が増えた。

イタチの延命用の薬を調合しようと思ったからだ。

月世の使う空遁は、繊細なチャクラコントロールが要求される。
そのため、月世は暗部時代医療忍術も仕込まれていた。


だが、延命用の薬となると、
一般的な医療忍術の知識では歯が立たない。
だから書物で勉強していたのだが───

「うーん…やっぱり本じゃ限界があるなぁ…」

月世はパタンと分厚い本を閉じた。

「誰かに教えてもらないと」

月世は誰か適役がいないか考える。
木ノ葉にいれば綱手様を探し出して教えをこうこともできるだろうが、
今となっては叶わぬ夢だ。

「…あ」

こんな身近に適役がいたとは。

月世は足早に部屋を出た。








「サソリさん?ちょっと入りますよ?」

アジトの扉を開けてみると、サソリは傀儡の手入れをしていた。
色白で整った横顔と、赤髪が見える。

「月世か。なんか用か?」

サソリは手を休めず返事をした。

「まあその辺に座れ」

月世は椅子に座ると、
イタチのことを切り出した。

「…なるほどな、それで俺のとこに来たわけか」

サソリはいつのまにか手を止めて、月世の話を聞いていた。

「そうなんです…だからサソリさん、薬草の知識を教えてくれませんか?」

「はぁ?めんどくせーな
なんで俺が…
だいたいな、俺は毒専門だぞ」

「そこをなんとか…
お願いします!」

月世はばっと頭を下げて必死に頼んだ。
サソリの知識ならより良い延命用の薬を作れるはずだ。

「ふん…そんなこと自分でなんとかするんだな。
俺は忙しいんだ」

(サソリさん、あんなナリして気難しい人だと思ってたけど…やっぱり一筋縄じゃいかないな)

月世が諦めかけた時、
ばんと扉が開いた。
デイダラが入ってくる。

「デイダラ?」

「おう月世」

デイダラは部屋に入ると、もう一つの椅子に座る。

「なあ旦那、そんなに頑なになることないんじゃないか?
減るもんじゃないんだしよ、うん」

サソリはあからさまに不機嫌な表情になる。

「あ?嫌に肩持つじゃねえか…
お前あれだろ、月世がお前の粘土に理解示してるからだろ?」

月世はデイダラの粘土細工が気に入って、
小型の鳥などをもらって部屋に置いている。

そういうこともあってか、デイダラは月世に寛容的な態度を示した。

「まあオイラの崇高な芸術を理解できるやつはなかなか…ってそうじゃねえよ、旦那」

「旦那もしかして知らねえか?」

「なんの話だ?」

「イタチと月世、結婚したんだってよ」

サソリは多少驚いた表情をした。

「結婚だと?
お前らお気楽なもんだな」

月世はやわらかく微笑んだ。

「まあお気楽なことに変わりはねえな、うん
…まあ月世もイタチも新婚だ、薬草の知識ぐらいやってもいいんじゃねえか?うん」

「あら、デイダラずいぶんイタチに優しいね。
あんなに嫌ってたのに…」

「うるせーぞ月世!
せっかくオイラが口添えしてやってんだ、ありがたく思え!うん!」

「…うるせえ!ガキども!
ったくしょうがねえな…
月世、オレは教育なんてガラじゃねえからな、容赦しねえぞ」

確かにサソリから見れば2人共10歳以上年下な上に未成年だ。
ガキと言いたくもなるだろう。

「本当ですか!? 
ありがとうございます!」

「ああ。じゃあ早速始めるからな」

「はい!」

月世は持参したノートとペンを取り出した。
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