花宴 上

□山桜
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「あれ?イタチ任務?」

朝食を食べ終わったあと、外出の準備をし始めたイタチを見る。

「ああ、そうだ」

いつもなら任務がある場合、前日には任務内容を説明し、月世にも準備を促すのだが、その説明はなかった。

月世は首を傾げる。

「イタチ、任務なら私も準備するよ」

食器を片付けると、月世も準備に取りかかった。


そんな彼女を見て、イタチは月世に近寄った。
忙しげに準備をする月世の腕をとる。

「ん?どうしたの」

「今日はオレと鬼鮫だけで行く」

「え、どうして?」

月世は全ての任務に同行してきたので、不思議に思ってイタチを見つめた。

「今日の任務は特に隠密行動が求められる…
できるだけ人数を削ぎたい」

「だからお前は今日は家で待っていてくれ」

「…なるほど。それなら家にいるね」

確かにイタチと鬼鮫程の実力者なら、戦力には事欠かないので
隠密行動の際には人数を減らした方がいい。

イタチは優しい目で月世を見た。

「ああ。ではそろそろ出る」

「あ、ちょっと待って!」

月世は慌ただしく台所に消えていった。

「……?」

イタチはそんな彼女の背中を見送る。

数分後、同じように慌てて月世が現れた。
手にはハンカチでくるまれた何かを持っている。

「…これは?」

「おにぎり。もちろん昆布味だよ!
荷物になっちゃうかもしれないけど…鬼鮫さんと食べて」

イタチは月世の気配りに口元をゆるめた。
月世の手からおにぎりを受け取る。

「ありがとう、月世」

「いいのいいの。道中、気をつけてね」

「ああ」

「あと怪我しないように」

「わかっている。月世も戸締まりには気をつけろ」

「了解です」

「では、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

月世は笑顔で小さく手を振った。
月世イタチは柔らかい表情でそれに応えると、
マントを翻して外へ出て行った。
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