花宴 上

□紫八染
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「はじめまして、鬼鮫さん。
十六夜月世です」

月世は微笑んで挨拶した。

「十六夜…どこかで聞いた名ですねぇ、イタチさん」

「木ノ葉の空遁使いの一族の末裔だ。
今日から俺の部下として側に置く」

「ああ、あの戦争で滅んだ一族でしたか。
まさか生き残りがいるとは…
しかも部下って、どういうことです?」

鬼鮫はいまいち解せない様子だ。

「えっと、私がイタチに頼んだんです!
里を抜けて、どこかに属したかったので…」

鬼鮫はいきなり現れた、月世とかいう女を眺めた。

(奇妙ですねぇ…イタチさんが女を連れてくるとは)

「そうですか。
まあ私は構いませんが」

「ほんとですか!
良かったー…、これからよろしくお願いします」

「こちらこそ」

「オレからも頼む。鬼鮫」

イタチはそう言うと、
月世を優しい眼差しで見た。
月世も微笑んでそれに応える。

(イタチさんのあんな表情見たことないですねぇ…
もしやこの二人…)

鬼鮫は数時間前を思い起こす。



森を歩いていたイタチが、急に立ち止まった。

「どうしたんです、イタチさん」

不審に思って振り返ると、イタチは写輪眼を発動させていた。

「この感じ…
里から出たな」

「……?」

鬼鮫は意図を計りかねた。

「鬼鮫、ここで少し待っていろ。
用事ができた」

「イタチさん?ちょっと…」

と言っている間に、既にイタチの姿はなかった。

「どうしたんですかねぇ…イタチさん」

そして待つこと数時間、現在に至る。



(イタチさんの用事って、月世のことだったんですねぇ)


鬼鮫は暁のアジトに向かって歩き出した二人の後ろ姿を見ながら、考えに耽った。

「…鬼鮫」

しばらく歩いた所で、イタチと鬼鮫が立ち止まった。

「…?」

月世は不思議そうに、
二人に合わせて足を止める。

「集合ですね」

「丁度いい、リーダーに報告するか。
月世、オレの腕をつかめ」

「う、うん」

月世がイタチの腕を掴むと、なにやら意識が飛んだ。
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