花宴 上

□鈴蘭
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その後、1、2回だがそういうことがあった。

月世は心配で、
そのたびに理由を尋ねるがイタチは取り合わない。

いつもの優しい笑顔で、

「なにも心配するな」

と言うばかりだった。

(おかしい、絶対なにかある…
どうしてイタチは何も言ってくれないんだろう)

月世はだんだん悲しくなってきた。
月世には言えないような何かがあるのだろうか。

これ以上イタチに聞いても埒があかないと判断した月世は、
鬼鮫に相談してみることにした。



「鬼鮫さん」

月世はアジトの鬼鮫の部屋を訪ねた。

「なんです、月世。珍しいですねえ」

「ちょっと相談したいことがあって...」

鬼鮫は近くにあった椅子をすすめた。
月世はそれに静かに腰掛ける。

「色恋の話なら私にしても無駄ですよ」

「何言ってんの、鬼鮫さん。
それより最近、イタチ変だと思わない?」

「そうですか?
私はわかりませんが…月世が一番わかるんじゃないですかねぇ」

月世はふうと溜め息をついた。

「ほら、最近簡単な攻撃を避けきれないことあったじゃない?」

「でもあのイタチだよ?
イタチが避けられないって、絶対おかしいと思うの」

「イタチに聞いてみても、はぐらかされるばっかりだし…
鬼鮫さんなら何か知ってるかと思ってさ」

そう言うと、月世はうなだれた。

(なるほど…最近なんか月世の様子がおかしいと思ってましたが、
こういうことでしたか)

(…ということは、まだ話していないんですねぇ…イタチさん)

うなだれる月世を見て、鬼鮫は口を開いた。

「まあ..何にしても、何かあればイタチさんは月世に言うでしょう」

「それまで待ってればいいんじゃないんですかねぇ」

それまでうつむいていた月世は、その言葉を聞いて顔を上げた。
そして鬼鮫を見ると、儚げな微笑を浮かべる。

「確かに..それもそうだよね」

「ありがとう、鬼鮫さん」

月世は吹っ切れたのか、晴れやかな表情で鬼鮫に礼を言うと、
立ち上がって部屋をあとにした。



「...礼を言われるのはガラじゃないですねぇ..」

鬼鮫は月世が出ていった扉をちやりと見やった。
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