花宴 上
□鈴蘭
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月世は鬼鮫の言葉を受けて、イタチが口を開くのを待つことにした。
イタチはいつも優しくて、月世の側にいてくれる。
だが、いつまでたってもイタチはなにも語ろうとはしなかった。
月世はそれに対する不満を表に出そうとはしなかったが、
微妙に三人の空気に影響をきたしていた。
そういう変化に気づかないイタチではないが、それでも彼は沈黙を守る。
鬼鮫はこの状況を見かねて、イタチと二人になったときに彼に声をかけることにした。
「イタチさん」
「なんだ、鬼鮫」
「いいかげん、月世に話したらどうです」
「........」
アジトで巻物に目を通していたイタチは、手を止めて鬼鮫を見る。
「なぜお前がそんなことを言う」
「ふん..私もそんなにお人よしではないですがね..
月世は随分と気にしているようですよ」
「..わかっている」
「幻術でもかける気ですか?まあそれでも私はかまいませんが」
「いつまでも隠せるものでもないですから、決断は早めにお願いしますよ..イタチさん」
そういうと、鬼鮫はイタチのもとを後にした。
「変わったな...鬼鮫」
イタチはその後姿を見送った。
巻物を片付けると、物思いに耽る。
目を閉じると、月世の柔らかな笑顔が浮かんだ。
「...鬼鮫の言うとおりだな」
イタチは静かに目を開けると、きっぱりとした足取りで部屋をあとにした。