花宴 上
□鈴蘭
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「…バカ!!」
予想外の言葉に、イタチは少々驚いて月世の顔を見た。
月世は悲しいやら腹立たしいやらで、
泣き顔がぐちゃぐちゃになっている。
「イタチのことなら…
私、いくらでも背負うよ!」
月世は席を立つと、座るイタチに歩み寄った。
ポロポロと涙がこぼれる。
「イタチの苦しみ、辛さ…
そういうの、全部私が受け止める」
「あなたの苦しんでる姿も、ちゃんと見たいの。見届けたいの」
「楽しいことだけ見せ合うのが…
恋人なの?愛する人にすることなの?
違うでしょう?」
「そんなの…幻術をかけ合ってるようなものだよ」
月世は嗚咽をあげながら続ける。
イタチは月世の気迫に押されて、彼女の言葉に聞き入るばかりだった。
「だから…私にも背負わせて。
イタチの病気」
「一人でなんでもしようとしないで。
私が…あなたのこと支えるから…」
そう言うと、月世は座っているイタチを抱きしめた。
いつもイタチがしてくれるように、優しく、守るように。
イタチはゆっくりと月世の背に腕を回す。
彼女の背中は震えていたが、
この小さな背中がこんなにも頼もしく思えたことはなかった。
「ありがとう、月世」
二人はしばらくそのまま抱き合っていた。