花宴 上

□紫苑
2ページ/8ページ

サソリの授業はたしかに難しかったが、
知識が無駄なく詰め込まれていた。

月世は必死にペンを動かす。

デイダラは最初の数分はいたが、飽きたのか部屋を出て行った。

「まあざっとこんなもんだ」

「なるほど…サソリさん、ありがとうございます」

「礼なんて言うんじゃねえ、気持ちわりい」

サソリはぶっきらぼうに返事をすると、傀儡の手入れの作業に戻った。

月世は立ち上がってぺこりとお辞儀をすると、
静かにドアを開けて出て行った。



──────…… 


サソリから得た知識を元に、何回か試作品を作る。

その度に月世はサソリのもとに赴き、効用を試していた。

「毒の効用ならまだしも、薬の効用を試す日が来るとはな…」

サソリがじとっとした視線で月世を見る。

その視線を、月世はやんわりと笑って受け流した。

サソリは毎回文句を言う上に、危うくヒルコの餌食になりそうになったこともあるが、
なんとか協力してもらっていた。





「イタチ、そろそろできそうだよ、薬」

月世はイタチと昼食をとりながら言った。

サラダを小皿にとってイタチに渡す。

「そうか。…それで最近サソリのところに行っているんだな」

「そうそう。サソリさん恐くてさ…
この前なんか、ヒルコで刺されそうなったんだから」

へへ、と笑った月世とは反対に、イタチは厳しい表情になる。

「お前、もし刺さったらどうするつもりだ」

「んー、大丈夫だよ。たぶん」

「まったく…無理はするな」

「うん、ありがと」

月世は美味しそうに食事を頬張った。







「サソリさん!これ!」

サソリのもとで効能を試していた月世は、興奮気味にサソリを呼んだ。

「なんだ、うるせえな」

サソリはめんどくさそうに月世の方にきた。
月世の手元を覗き込む。

「…いいんじゃねえか?」

「! ほんとですか!?
よかったぁ〜…」

月世はほう、と安堵したように溜め息をつく。

「まあこの薬ならある程度の効果が期待できるだろうよ」

「サソリさん、本当に助かりました!
なんとお礼を言ったらいいか…」

「何度も言わせるな、礼なんか気持ちわりい」

サソリは凄んだ表情で月世を見るが、
彼女は笑顔で返した。

「サソリさん、ありがとうございました」

「…わかったよ、さっさと行け」

月世は頭を下げると、はやくイタチに見せたいのだろう、
足早に部屋を出て行った。

「…たく、あいつがいると調子が狂うな」



サソリはうんざりだとばかりに溜め息をついた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ