花宴 上
□紫苑
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サソリの授業はたしかに難しかったが、
知識が無駄なく詰め込まれていた。
月世は必死にペンを動かす。
デイダラは最初の数分はいたが、飽きたのか部屋を出て行った。
「まあざっとこんなもんだ」
「なるほど…サソリさん、ありがとうございます」
「礼なんて言うんじゃねえ、気持ちわりい」
サソリはぶっきらぼうに返事をすると、傀儡の手入れの作業に戻った。
月世は立ち上がってぺこりとお辞儀をすると、
静かにドアを開けて出て行った。
──────……
サソリから得た知識を元に、何回か試作品を作る。
その度に月世はサソリのもとに赴き、効用を試していた。
「毒の効用ならまだしも、薬の効用を試す日が来るとはな…」
サソリがじとっとした視線で月世を見る。
その視線を、月世はやんわりと笑って受け流した。
サソリは毎回文句を言う上に、危うくヒルコの餌食になりそうになったこともあるが、
なんとか協力してもらっていた。
「イタチ、そろそろできそうだよ、薬」
月世はイタチと昼食をとりながら言った。
サラダを小皿にとってイタチに渡す。
「そうか。…それで最近サソリのところに行っているんだな」
「そうそう。サソリさん恐くてさ…
この前なんか、ヒルコで刺されそうなったんだから」
へへ、と笑った月世とは反対に、イタチは厳しい表情になる。
「お前、もし刺さったらどうするつもりだ」
「んー、大丈夫だよ。たぶん」
「まったく…無理はするな」
「うん、ありがと」
月世は美味しそうに食事を頬張った。
「サソリさん!これ!」
サソリのもとで効能を試していた月世は、興奮気味にサソリを呼んだ。
「なんだ、うるせえな」
サソリはめんどくさそうに月世の方にきた。
月世の手元を覗き込む。
「…いいんじゃねえか?」
「! ほんとですか!?
よかったぁ〜…」
月世はほう、と安堵したように溜め息をつく。
「まあこの薬ならある程度の効果が期待できるだろうよ」
「サソリさん、本当に助かりました!
なんとお礼を言ったらいいか…」
「何度も言わせるな、礼なんか気持ちわりい」
サソリは凄んだ表情で月世を見るが、
彼女は笑顔で返した。
「サソリさん、ありがとうございました」
「…わかったよ、さっさと行け」
月世は頭を下げると、はやくイタチに見せたいのだろう、
足早に部屋を出て行った。
「…たく、あいつがいると調子が狂うな」
サソリはうんざりだとばかりに溜め息をついた。