花宴 上

□夏水仙
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「しかし…こんなお子さんにあの九尾がねぇ…」

「ナルト君、一緒に来てもらおう」

二人の言葉に、ナルトは驚きと恐怖を露わにした。

月世はナルトの尾獣を抜かれるという最後を考えると胸が痛んだが、どうしようもなかった。
イタチの思いを達成するためなら、
どんな痛みにも耐え悪に染まることはとうに覚悟したことだ。

「ナルト君、来て」

月世はナルトを手招きした。
ナルトはゆっくりと部屋を出る。

「うーん…イタチさん…
チョロチョロされるとめんどいですし……」

「足の一本でもぶった斬っておいた方が…」

鬼鮫が鮫肌の柄を握る。

(斬りたいだけでしょう、鬼鮫さん…)

月世は心の中でこっそり呟いた。


その時。

背後に懐かしい気配を感じる。
それは、紛れもなく──


「久しぶりだな……サスケ」

イタチは振り返らずに言った。
月世は驚きで体が固まる。

サスケが…今、すぐ後ろにいる。

月世はごくんと固唾を飲んだ。


「うちはイタチ…」

声もすっかり大人らしくなっている。
月世は駆け寄りたい衝動に駆られたが、必死で耐えた。
イタチの死に様を守るというのもあったが、
サスケの大切な時期に側にいてやれなかった自分に、
駆け寄って懐かしむ権利など到底あるとは思えなかった。




「アンタを…殺す!」

背後からものすごい殺気を感じる。

鬼鮫は振り返ってサスケの顔を見た。

「ほう…写輪眼
しかもアナタに良く…一体何者です?」

「オレの…弟だ」

イタチは冷たい声で言った。
月世は鬼鮫の影になるように立っていたので、
サスケの目にはまだ入っていないようだ。

「うちは一族は皆殺しにされたと聞きましたが……アナタに」



サスケが憎しみを露わにしながら言葉を発する。

「…アンタの言った通り…
アンタを恨み憎みそして…」

バチバチと音がする。何かの術を発動させたようだ。

「アンタを殺す為だけにオレは…」

「生きて来た!」

チリチリと激しい音がする。
サスケは怒りと憎しみで極限状態だ。

「…千鳥?」

イタチが呟いた。

「うオオオオオ!!!」

サスケは真っ正面から突っ込んでくる。
廊下の壁がガラガラと崩れた。 


(サスケ…修行、たくさんしたんだね…私がいなくなってから)

月世もカカシの後輩なので、
千鳥の難易度の高さは知っている。

(あの時は豪火球ができたって喜んでたのに…)

嬉しそうに月世に術の習得を話してくれた、
幼いサスケが目に浮かぶ。
それはつい昨日の出来事のように鮮明だった。


月世は、自分がたやすく感傷に浸っているのに気付いて自己を戒める。


こんなことでは、これからの未来にこの兄弟に起こることを見届けられない──

月世は大切な思い出を頭の片隅に追いやった。



イタチは片手で千鳥を防いだ。
イタチがサスケの腕を掴んだ時、
サスケの視界に月世が目に入る。

「…月世…!」

サスケは驚いて目を見開いた。
サスケの顔。
成長した彼は記憶よりもずっと大人っぽく、男らしくなっていた。
そんな中にも、幼い頃の面影が残っている。
月世は感情を押し込むのに苦労した。


「えっ…サスケ、このねえちゃんと知り合いか!?」

後ろでナルトが驚いたように言った。

「…ああ…オレの姉貴みたいなもんだ…
アンタはイタチに殺されたんじゃなかったのか…?」

月世はあらゆる感情に蓋をして、サスケに向き合った。
今感情を感じたら、月世は壊れてしまうだろう。


「私は…イタチの仲間なの。
わかるでしょう?」

月世は冷たい声で言う。

「…そんなのわかるかよ!
アンタは真実を聞いてくると言った!
その結果が…これかよ!」

サスケは敵意を剥き出しにして叫んだ。

「…これが真実だよ。サスケ…
私はイタチの考えを聞いて賛同したの。
己の器を量る…これは重要なこと」

月世は表情を一切かえずに言い放った。

「くそがぁぁ!」

サスケは怒りに震え、イタチの手から逃れようとする。

その時、凶悪なチャクラが場を満たした。
三人は素早く反応する。

「これが九尾のチャクラ…」

月世はナルトの方を振り返った。
イタチは動くサスケの腕を片手で折る。

「邪魔だ…」

「ぐああああっ!」

月世は目を背けそうになったが、
耐えてサスケの姿を見る。
ナルトはなにやら口寄せをしようとしたらしいが、
鬼鮫が鮫肌で阻止した。
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