花宴 上

□夏水仙
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「ちょこまか術をやられると面倒ですね…」

鬼鮫がナルトに近づく。

「先ず足よりその腕を斬り落としましょうか」

鮫肌を勢い良く振りかざす。
その刹那───

大きな蝦蟇が現れ、鮫肌からナルトを守った。

「自来也様…」

月世は静かに呟いた。

「この男 自来也!女の色香にホイホイと付いていくよーにゃできとらんのォ!
ワシぐらいになれば己の色香で女がはしゃぐ!」

自来也は豪快に登場し、周囲を圧した。
背には例の女を背負っている。


「クク…伝説の三忍と謳い称された自来也様ですからね
あなたがいくら無類の女好きでも
そう簡単に足留めが成功するとは思いませんでしたが…」

「どうやらその女にかけていた幻術は解いたようですね」

イタチと自来也が睨み合う。

「ナルトからワシを引き離すために 女に催眠眼で幻術をかけるたァ…
男の風上にもおけねェやり方だのォ」

自来也の視線がイタチから動き、月世に注がれる。

「そして…十六夜月世…
木ノ葉の暗部だったお前が、イタチに…暁に寝返ったというのは本当だったらしいのォ」

「ええ…その通りです」



しばらくの沈黙のあと、自来也は再び口を開いた。

「目当てはやはりナルトか」


「…道理でカカシさんも知っていたはずだ
なるほど…情報源はアナタか…」

「…ナルト君を連れていくのが
我が組織 ”暁” から下された我々への至上命令」

自来也は厳しい表情でイタチを睨む。

「ナルトはやれんのォ…」
 
「どうですかね…」

「ちょうどいい、お前ら三人はここで…ワシが始末する!」

辺りに緊張が走る。
月世はチャクラを練り始めた。
が、少年の声がそれを遮る。


「…手ェ出すな…」

「こいつを殺すのは…オレだ…!」

サスケがふらふらと立ち上がる。

「今…お前などに興味は無い!」

イタチの声は氷のようだ。
容赦なくサスケを蹴り飛ばし、壁に叩きつける。

「サスケ!ちくしょうがぁ!!」

「ナルトォ!…手ェ出すなつってんだろが!!」

勢い良く走り出したナルトは、サスケの怒号に立ち止まる。

「これはオレの戦いだ!!」

イタチが静かにサスケに歩み寄る。
迷いは微塵も感じられない。

「上等だァア!!」

サスケは息も切れ切れにイタチに食ってかかった。
そんなサスケを、イタチは冷徹にいたぶる。執拗なまでに、サスケを殴りたおした。

「容赦ないですね…」

「うん…」

鬼鮫が呟く隣で、月世は胸が裂かれる思いだった。
わかっていたとはいえ、こういう光景を見るのはこたえた。

サスケの絶叫が響く。

「イタチ…サスケに月読を…」

「イタチさん…日にそう何度もその目は使わない方がいいですよ」 

月世は苦しげに、かすかに目を細めた。
兄弟で殺し合うなど、なんと悲しいことだろう…。



「…そこのねえちゃん…」

後ろから、ナルトが月世に声をかける。
月世は振り返って彼を見た。 


「サスケは…サスケは、お前のこと姉貴みたいな存在って言ってたんだぞ…」

「ねえちゃんにとって、サスケは弟じゃねえのかよ…?」

「サスケがあんなにされてんのに、なんでそんなに平気な顔してんだよ…!!」

ナルトの言葉で、月世の感情の蓋は開きそうになる。
それほど彼の言葉は真っ直ぐ月世の胸に入り込んできた。
彼の真っ直ぐさに、些かの恐怖さえ覚えたほどだった。


「…ナルトくん…
私はイタチの目的を遂げさせたいだけ…
私の…イタチの思いはサスケの命より重い」

「…器を量る…ってやつか…?」

「その通り」


月世は無表情にナルトを見おろした。
ナルトの目は怒りに燃え、真っ直ぐに月世の瞳を射る。

(なんて正直な目…)

月世はナルトの視線を受け止めながら、
ナルトの目の中になにか強い力を感じた。
九尾などではない、ナルトの力を感じ取った。
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