花宴 上

□夏水仙
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「いい加減にしやがれェ!てめーら!!」

ナルトは真っ直ぐに走ってくる。
月世が応戦しようとした時、壁が肉に覆われる。

「…これは!?」

月世は辺りを窺った。
足が肉に固定されていく。

「忍法・蝦蟇口縛り…
残念だのォ イタチ…キサメ、月世
お前らはもうワシの腹の中!」


「鬼鮫、月世来い!」

「チィ!」

「足が…!」

しつこく足を縛る肉に苦戦しながら、月世はイタチのもとに走った。
三人は全力疾走で廊下…いや、蝦蟇の食道を駆け抜けた。

「わ…気持ち悪い術!肉の壁が迫ってくる…!」

月世は走りながら周囲を見やった。

「壁の方が速いですね…このままじゃ…」

イタチは静かに目を閉じた。

  
  「天照」


三人は食道を抜けた。





─────……





イタチ一行は歓楽街を抜け、川面を走る。

「何故退く必要が…アナタなら…」

鬼鮫は惜しそうに喋った。
イタチは少々息苦しげに答える。

「…今のナルトなら焦る必要は…ない」

「…それにオレも当分は一所で…体を休めなくてはならない
月読はおろか…天照まで使わされてはな…」

イタチは写輪眼を解除した。
月世は心配そうにイタチを見る。

「そうだね…とりあえず今は家に帰ろう」

三人はそのまま景色の中に消えていった。







アジト付近までくると、イタチと月世は鬼鮫と別れて自宅に戻った。

月世は家に着くなりイタチをベッドに寝かせる。

「イタチ、ゆっくり休んでね…」

イタチに掛け布団をかけてあげながら、
月世はイタチを労った。

イタチはゆっくり目を閉じる。

「…あんまり無理しないでね」

月世は優しくイタチの頬を撫でた。
イタチは月世の手に自らの手を重ねる。

「済まない…月世」

彼は目をゆっくりと開けて、月世の瞳を見た。

「…よく耐えたな。
サスケに再会して…言いたいこともあっただろう…」

月世はベッドの横に膝をついて、イタチの顔を覗き込む。

そして、ふわりと笑った。

「それは…あなたも同じでしょ。
私はサスケに合わせる顔がないし…」

イタチは静かにまばたきする。
睫毛が美しい。

「イタチと…サスケのためなら、私の感傷なんてとるに足らないことだよ…」

「それに…今はサスケを遠ざけることしかできないけど…
いつかは、あなたの気持ちが、どんな形であっても伝わるって信じてる」


イタチはかすかに微笑んだ。

「お前にそう言われると…不思議とそんな気もしてくるな…」

イタチは月世の頬に軽く触れた。
月世も微笑み返す。

イタチの視線は、月世の顔からマントの胸元に移った。

「それで…
墓参りから懐にいれてるそれはなんだ?」

月世はドキリと胸元を見た。
この巻物は、まだイタチには見せたくなかった。

「…なんでもないよ」

「…そうか…なら、いい」

イタチはそれ以上追求しようとはせずに、目をゆっくり閉じた。
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