花宴 上

□京鹿子
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「月世、俺も子供はほしい」

「だが…月世、おそらくおまえひとりで育てることになるだろうし…暁は、子育てするには危険すぎる集団だ」

「…誰か新しい人が、お前を支えてくれるならいいが…」

イタチはふ、と笑った。
その笑顔があまりにも哀しげで、月世の胸は締めつけれる。


「イタチ、あなたの子がほしいと思ったのは…
あなたが最初で最後の人だと思ったからだよ」

「小さい頃から…ずっとあなただけを見てきた。
それは今でも変わらない」

「これからたくさん壁にぶち当たると思うけど…子供は絶対に守り通す。
その子を守るためなら…私はなにがあっても生き残る」

月世はふわりと微笑んだ。


「だから、私を信じて」


イタチはしばらく月世の顔を見つめた。
この小さな体のどこにそんなエネルギーがあるのかと思うほど、
月世は強い女だった。

イタチは手を伸ばし、月世の髪を撫でる。


「…そうだな、お前は..そういう女だったな」

滑らかな髪をとかしながら、イタチは柔らかく微笑んだ。

「月世、こっちに来い」

イタチは月世を手招きする。
月世は椅子から立ち上がり、イタチの方へ歩いていく。
イタチも椅子から立ち上がった。

イタチの手が月世に伸びる。
気付くと、月世はイタチの腕の中だった。
月世は目をつぶる。
いつもの、イタチの匂いが月世を包み、彼女の心を満たした。
イタチは月世の腰の辺りと、後頭部を掌で優しく包む。


「月世、俺たちの子を…産んでくれ」


月世もイタチの背に腕を回す。

グラスの氷は溶けてなくなっていた。







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