花宴 上
□京鹿子
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ほどなくして暁は、砂隠れの里に一尾の人柱力である、砂漠の我愛羅がいることをつきとめる。
その捕獲のため、デイダラとサソリの二人が砂に向かうことになったのたが───
月世はそれを聞いたとき、真っ先に砂の相談役、チヨ様の秘術を思い出した。
(もしうまく術のノウハウを盗めたら…完璧な蘇生忍術を完成できるかもしれない)
そんな一抹の期待が月世の脳裏をよぎる。
月世としては、まだ迷いがあるものの、可能性は全て試したかった。
「…よし、着いていこう」
月世はイタチの部屋に向かった。
「あの二人について行くのか?」
部屋を開けると、イタチはだんごを片手に茶を飲んでいるところだった。
月世の言葉を聞いて、イタチは少しばかり目を見開く。
「うん、チヨ様の術を盗めたらと思って」
「…そうか…」
イタチは否定も肯定もせず、月世の言葉を聞いた。
「…相手は一尾の人柱力だし、砂影だ…
十分に用心しろ」
「大丈夫、デイダラのノルマだし…
あの子はしっかりやるよ」
「ふん、どうだかな…」
イタチの涼やかな瞳が、月世を優しく見つめた。
「無茶だけはするなよ」
「ありがとう、イタチ」
月世は彼の視線を微笑みで返すと、部屋をあとにした。
「サソリさん!デイダラ!」
アジトに行ってみると、彼らは丁度出発するところだった。
「月世どうした、うん」
デイダラは笠を被りながら尋ねる。
「今回、私もついていっていい?」
月世は二人を見ながら言った。
「ん、オイラは別にかまわねえが…旦那、どうだい」
デイダラはヒルコをちらりと見やる。
サソリは溜め息混じりに言った。
「…こいつほっといても着いてくるだろ…
来るならさっさと歩け、オレは待たされるのは嫌いだ」
そう言うと、サソリは二人を気にすることなく足を進める。
デイダラはやれやれというような視線で彼の背中を見た。
「行こうぜ、月世」
「うん、ありがと」
三人は砂漠に向けて歩き出した。
風が乾燥し、砂埃が舞う。
砂隠れが間近に迫っている証だ。
「でもよ、なんでオイラたちと来たんだ?うん?」
デイダラは暇つぶしに月世に話しかけた。
「ん、今蘇生忍術の研究しててね…
昔砂隠れが研究してたっていうのを聞いたことがあるから、それをちょっと調べようかと思ってね」
月世は日差しに目を細めた。
笠を目深に被り直す。
「…おいお前ら。見えたぞ」
サソリが二人のお喋りをたしなめるように言った。
目をこらすと、前方にはうっすらと、砂隠れの砦のような外壁が浮かび上がっている。
「でもサソリさん、どうやって里に?
さすがに強行突破は厳しいでしょう」
「スパイを入れてある、問題ない…」
「そうか、大蛇丸んとこにやった奴よりこっちが先か…うん
何やらオイラ達の情報を垂れ流しにするような
裏切り者になってるらしいが…うん」
「仕方無ぇだろうが
術をかけた後どうなるかなんてオレも知らん」
(それ術者としてどうなの、サソリさん…)
月世はつっこみそうになったが、ヒルコの毒を思い出してそっと胸にしまった。
「その袋だけで大丈夫なのか?
相手は人柱力を使うんだぜ…」
「オイラの術は全て芸術だ…それにちゃんと十八番も持ってきてる …うん」
「なんせ相手は…一尾だからな、うん」
そう言うと、デイダラは掌から舌を覗かせた。
「月世もオイラの芸術を目に刻んどけ、うん」
デイダラは得意気に月世を見てにやりと笑う。
三人は砂隠れの入口に辿り着いた。