アクマでキミのモノ!

□2.とりあえず、秘密
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───僕が転入して数日が経った。


居心地はまぁ悪くないけど、なんか不思議な学校だよ。

当たり前だけど周り女の子ばっかりだし、でも僕が知ってるようなタイプと違って皆お嬢様って感じでおっとりしていて騒がしくないし。

そもそも校風だとかよく知らないで近藤さんの学校だからってだけで来たくなっちゃったんだもんね。
早く慣れないといけないんだけど。


「ねぇねぇ、土方さんってどんな子?なんかすごく女の子に人気あるよね」


そうクラスの子に聞いてみた。


…だってさ、彼女が校舎までの道のりを行くだけで後輩の女の子達から小さく歓声が上がるんだ。

彼女もそんなことには慣れているのか特に気にする風でもなく、遠巻きに眺められている時は颯爽と通り過ぎるけれど、かといって近寄り難い雰囲気かといえばそうでもない、声を掛けられればふんわりと微笑んで応えたりしている。

この間なんか門のところで中等部の女の子達からラブレターらしきものを渡されているところを目撃した。


…あの子……どう見ても女の子だよね?

女の子同士でこんなこと…女子校ってこういうもんなの?


そう思って尋ねると、皆は当然のように笑顔で頷き合う。


「それはそうよ、土方さんは特別だもの…!」


え、ちょっと…皆、頬を染めてうっとりしてない?


「まずはあの圧倒的な美貌!その上秀才でしょう?
内面だって誰に対しても優しいし、とても頼りになるし…およそ欠点なんて見当たらないもの」


「私達はああなれたらって憧れているし、中等部の子達のような後輩からはまるで王子様のように思われているわよね」


は?王子!?…女の子なのに!?


「ファンクラブもあるそうよ?」


「去年の学園祭での劇なんて格好良すぎて衝撃だったわよね…!」


「ああ!三銃士ね、確かにあの直後の土方さんの人気ったら大変な騒ぎだったわよねぇ」


「…へぇ……」


“へぇ”以外になんて言ったらいいの、これ?
宝塚じゃあるまいし…
校内で女の子が女の子に焦がれちゃうような環境って異常じゃないの…?


「なんか凄いんだね…女子校だから?
僕の元いた学園なんかじゃあり得ない事態だよ…」


「女子校というより、土方さんだからじゃないかしら」


「毎年あんな素敵な方がいるわけではないものね?
今の第三学年の先輩にも土方さん程の方はいらっしゃらないし」


ねぇ、と顔を見合わせて微笑むこの子達は雅ちゃんがそう思われるのも不自然だとは思っていないみたい。


成程ねぇ…カリスマなんだ。
なんかその同姓からの人気ぶりまで僕の知ってるもう一人の土方さんとかぶってて嫌だなぁ…

でも土方さんに妹がいるなんて聞いたことないし。
なんか顔立ちや瞳とか髪の色まで近いものを感じるけど、他人の空似なのかな。

ま、近いって言っても男の土方さんなんかより断然綺麗で可愛いけどさ。

ますます面白いなぁ。


「総司」


皆と話し終えて自席に戻った頃、声を掛けられて教室の入口へ視線を向ければ、隣のクラスから一君が訪ねてきたみたい。


「どうしたの、なんかこの学校に来てからよく僕のところに来るよね」


「…男子が同じクラスにいない故、致し方なかろう」


「仕方なく僕の所に来てるの?なにそれ嬉しくないなぁ」


一君はA組に入って来ると、僕の隣席で帰り支度をしている雅ちゃんにも会釈した。
そういえば二人が話してるのって見たことないけど、僕の所に来る度に顔は何度か見てる筈だよね。

一君はどう思ったんだろう、ねぇこの子土方さんに似てるよね?


「B組の斎藤さん…ですよね?
土方雅です、よろしくお願い致します」


「斎藤一だ。総司が世話になっている」


「いえ、そんな。確か…お二人は同じ学園からの転入でしたよね。
仲がよろしいんですね」


にっこりとそう言う雅ちゃんに普段無表情な一君が少し戸惑った表情を見せた。

そりゃそうだよね、別に僕達仲よしって訳じゃないし。


「それ程…でもないが…。
総司、これから剣道部へ入部申請に行こうと思うが共に行くか?」


「うん、行こうかな。早く入部しないと放課後暇だしね。
じゃあまた明日ね、土方さん」


本当は土方さん、って呼ぶの嫌なんだけど。
口に出す度にあの人とかぶるし。
そのうち名前で呼ばせて貰おう。


「ごきげんよう、沖田さん、斎藤さん」


雅ちゃんはにっこりそう言った。



* * *



「一君、似てると思わない?」


「何がだ」


「何ってそりゃ土方さんに決まってるじゃない」


「彼女が何か?」


「えー何も思わない?彼女、古典の土方さんとそっくりでしょ?」


一君は一瞬押し黙ると眉を顰めてぼそりと呟いた。


「…総司、失礼なことを言うな」


「なにそれ、どっちに対して?」


「どちらに対してもだ」


…あっそう、一君は男の方の土方さんが大好きだもんね。
こんなこと話しても盛り上がるわけないか。
でもさっき言葉に詰まったのは多分一君も少なからず似てるって思ったからだよね?


「実は血縁者だったりしないかな」


「………。」


「でも土方さんに妹がいるなんて聞いたことないし、従姉妹とか?」


「………。」


「ねぇなんか反応しようよ、一君」


「…道場に着いたぞ」


えーなにそれ、つまんないなぁ。


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