私の執事になりなさい!

□執事 斎藤の場合 その1
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・・・さま。お嬢様・・・

「お嬢様、そろそろ起きませんと遅刻致します。」




・・・・・?

何だか、斎藤さんの事を考えながら寝たせいか、斎藤さんの幻聴が聞こえる・・・。

そう思って薄目を開けた私の瞳に、執事服の斎藤さんの姿が映る。


・・・・これも夢?




「お嬢様、お目覚めですか?」


私の耳に、今度はさっきよりはっきりとその声が届く。



「え、斎藤さん?!何で?」


私は一気に目が覚めて、ベッドから起き上がる。



「本日から、美月様の専属の執事を、旦那様から仰せつかりました。美月様もご承知だと聞いておりますが。」

「・・・それは、そうなんだけど・・・」

「朝食の用意が整っております。早急にお召換え下さい。」



ハッとして目覚まし時計を手に取る。

いけない、アラームをセットし忘れている。
慌ててベッドを降り、クロゼットに向かおうとする私を、斎藤さんの声が止める。




「お嬢様、制服はこちらに用意してございます。」

振り返ると、ハンガーラックに吊るされた制服一式がきちんと揃えられている。




「・・・ありがとうございます。」

「いえ。お礼は要りませんので、どうかお召換えを。」

「はい。」

「・・・・・。」

パジャマのボタンに手をかけ、ふと手を止め、斎藤さんを振り返る。


「・・・・。」

訝しげに私を見る斎藤さん。



「あの、斎藤さん。すみませんが、部屋を出ていて頂けますか?着替えたいので・・・。」


一瞬、固まったのち、ほのかに頬を染めた斎藤さんが深々と頭を下げる。


「かしこまりました。」

彼が出て行って、ドアが閉まるのを確認して、ひとつ溜息をついて自分のかっこうを見下ろす。
パジャマ姿と寝癖の付いた髪を見られてしまった・・・。
赤くなりたいのは私のほうだ。







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