短編 (幕末)
□おひさまの匂い
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今日は朝から気持ちの良い天気。
雲ひとつない青空を見上げれば、それだけで気分も浮き立つ。
千鶴は、いつものように洗濯を終え、
せっかくの天気を無駄にしてはもったいないと、幹部たちの布団を干す事にした。
屯所の廊下に所狭しと、布団が広げられる。
あとは、おひさまにお願いするだけ。
(ふふ、今日は皆さん、ふっかふかのお布団で寝られますね)
おひさまの匂いを思い出して、つい口元がほころんでしまう。
昼餉の片付けも終わり、皆の布団を取り込み、それぞれの部屋へ運ぼうとした時、
「お、布団干してくれたのか、ありがとな!俺も手伝うよ」
と平助がやってきた。
軽々と布団を運ぶ平助くんの背中を頼もしく見つめながら、(平助くんも男の人なんだよね・・)なんて今更ながらに思う。
二人して布団を運び終え、ほっと一息つく。
「平助くんが手伝ってくれたお陰で、早く終わっちゃった。ありがとう。」
「こっちこそ。干すの、一人で大変だったろ?ありがとな。」
そう言って、ニッコリ笑う、おひさまみたいな笑顔。
たとえ、今日みたいな晴れの日じゃなくても、
平助くんの傍は、いつも陽だまりみたいにあたたかい。
「はあ〜、なんかこんなにあったかいと、眠くなっちまうな。」
そう言いながら、日当たりの良い廊下壁に背中を預け、目を瞑る。
「ほんとだね。」
私も、彼の横にそっと腰をおろす。
目を瞑るとほんとに眠ってしいまいそう・・・。