私の執事になりなさい!
□プロローグ その1
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時間ピッタリに迎えに来た黒塗りのピカピカの車の助手席から、綺麗な男の人が降りてきて、私を見ると、恭しくお辞儀をした。
その一挙一動があまりにも美しくて、挨拶するのも忘れ、ただ見蕩れていた。
「美月様ですね。近藤家からお迎えに伺いました。
お荷物はこれだけでよろしいですか?」
無駄のない仕草で、私の荷物を持ち後部座席の扉を開ける。
「あ、はい、これだけです。ありがとうございます。」
バカみたいに突っ立っていた自分が恥ずかしくなり、ペコリとお辞儀をして、そそくさと座席に乗り込む。
私が座ったのを確認すると、静かにドアが閉められた。
普段乗り慣れた姉の軽自動車とは明らかに違う、ふかふかのシートに
なんだか、お尻が落ち着かないなぁ・・・
なんて考えていたら、突然彼が私を振り返る。
「ご挨拶が遅れて申し訳ございません。私は近藤家で家令をいいつかっております土方歳三と申します。
こちらは運転手の山崎です。以後、宜しくお願い致します。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
ミラー越しに、山崎さんも目礼をしてくる。
私も、再びペコリと頭を下げた。
「奥様もご一緒にいらっしゃるはずでしたが、急なお仕事が入り、大変残念がっておいででした。
夕食までには戻られるとのことでしたので、それまでは、どうかお寛ぎになってお待ちください。」
「はい、ありがとうございます。」
こんな高校生の小娘にも丁寧だなぁ・・・。
でも、本当にお金持ちのお家には執事がいるんだ・・・
執事喫茶やアニメとかじゃなくて、本物だもんね。すごいなぁ。