終焉

□序章
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「強化合宿があるらしい」

立海大マネージャーがそんな話を聞いたのはほんの一週間前の事だった。それは夏休みが始まる直前の話で、いつものように放課後練習に入るかと思えば幸村にその話を告げられ、現在に至る。

「んで、そのそとば……とかいうところには行くんスか?」
「うむ、せっかくの誘いだ。行かぬわけにはいかんだろう」

小首を傾げ呟いた切原に真田が頷きながら答える。その他の立海R陣もどんな合宿になるんだろうと部室内で話しに花を咲かせている。
そんな中、柳は一人何故か持っている地図を広げてしきりに首を傾げていた。

「外場……聞いたことが無いな」
「柳くんでも知らない場所なんだね。
それよりも長期合宿なんてみんな大変そう……頑張ってね」

暑さにうんざりしたような声で氷空が呟いた。パタパタと制服の胸元を掴み、扇ぎながら氷空は柳の見ている地図を覗き込む。

「何言ってるんだい、氷空。君も行くに決まってるだろ?」

氷空の呟きに反応した幸村が清々しいほどの笑みを浮かべながら言う。氷空はえ、と驚いたように目を見開いた後恐る恐るといったふうに幸村を見つめた。

「えーっと……ほかに女の子いるんだよね?」
「フフ……いるわけないだろ。氷空は特別に呼ばれたんだから。原則的にマネージャーの参加は禁止なんだよ」

そう言い切ると幸村はさらに微笑む。その表情にさっと焦りを浮かべて氷空は青ざめた。

「え……男の子ばっかり……?で、でも他の学校に不公平だよそんなの」
「だって、むさ苦しい野郎ばっかりじゃ気が滅入るだろう。試しに跡部に氷空を連れて行ってもいいか聞いたら二つ返事でOKされたよ。むしろ、連れて来いってさ」
「……」

完全に言いかえすことができなくなった氷空は恨みがましげに幸村を見つめると
はあ、と大きくため息をついた。その様子をジャッカルが憐れむような目で見ていたのはいつも通りの事である。
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