終焉

□親戚
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その日の午後。
朗らかとは言い難いがゆったりとした午後だった。合宿初日は大掃除だ。

何と各選手に一部屋ずつ部屋が割り当てられたので各自自分の部屋、加えて終わったものから各合宿所に設備されている食堂、キッチン、トイレ、風呂、談話室の掃除をすることが決まっている。あらかじめ、業者によって掃除をされていたのかあまりすることは無いのだが。

氷空はというとミーティング及び昼食後、幸村に特別に許可をもらい、他校の知り合いに挨拶をすることが許されていた。ただし門限付で午後3時までと決まっている。

「あ、氷空。やっと会いに来てくれたんだ」
「周君、久しぶり…かな?」

従兄弟の不二周助に会うため、それが氷空が青学の宿舎を訪れた理由だった。久しぶりの従兄弟の笑みに相変わらずだね、と氷空も微笑む。

「心配してたよ、氷帝から立海大に転校なんて悪い虫がついてたらと思うと」
「周君ったら…そんなのないってば」

そういって気楽に顔の前で手を振る氷空に不二は顔を顰めた。

第3者として氷空を見てみると氷空が他の男に人気があるのがどうしてか小さなころから不二は気にいらなかった。彼女にとって自分は親しい親戚でしかないというのに。

「由美姉も元気にしてる?」
「うん、氷空によろしくっていってたよ」
「ふふ、由美姉にも会いたいなあ。合宿終わったら周君の家に行ってもいい?」
「ああ、もちろんだよ」

慕っている従兄弟の中でも姉のような存在を思い浮かべて氷空が目を伏せる。

不二の家族とは小学生の頃までは交流があったのだが、不二と氷空が中学に入学してからは正月と盆くらいにしか会う機会がなくなったのだ。

「不二先輩!部長が……ってアンタ、立海のマネージャー」

不意に氷空の後ろから声が掛かった。
氷空が振り向くとそこに立っていたのは帽子を深く被った越前リョーマだった。氷空は思い出す様に首を傾げると自信なさげに彼に尋ねる。

「あ…えーっと越前くんだっけ?
私は周君の従兄弟で立海大のマネージャー不二氷空ですって紹介は…さっきしたっけ」

昼食前のミーティング時、氷空は全員の前で自己紹介をし、一通り自分のことを話していた。選手たちは自己紹介をしていないが氷空は事前に幸村と柳から選手の情報を渡され選手の顔と名前、大まかな性格は知っていた。

ただし、氷帝、青学、ルドルフには遊びにいったり知り合いがいたりするので顔見知りは多かった。越前に会うのは初めてだったが。
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