終焉

□犠牲
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「と、いうわけだ。この合宿自体は続行とする。各自、自己管理はきちんとするようにいいな!手塚、問題ないな」
「ああ、油断せずに行こう」

午後のミーティングで土砂崩れの件を跡部から説明しミーティングを終えた。比嘉中だけは異論のありそうな顔をしていたがここは山の中、反論のしようが無かったのか一言も言葉を発さなかった。

「周君、裕君」

ミーティング後、じゃれ合っていた周助と裕太を見つけ、氷空は不安そうな面持ちで2人に声を掛けた。

「ん?氷空、どうかしたのかい?」

周助が心配そうに氷空の顔を覗き込む。

「特に何もないけど……何だか嫌な予感がして……」
「そうか?まあ緊急事態だけど何とかなるだろ」

あっけらかんとした様子で裕太が言う。
そんな様子に考えすぎかな、と思い氷空は小さく頷いた。

「氷空」

頷いたと同時に柳が合宿所へ戻るぞと氷空に声を掛ける。周助と裕太に別れを告げて、氷空は柳と同じ傘に入りながら立海の宿舎への道を歩いた。

「柳くん……何か、変じゃない?」

先ほどから胸騒ぎのする胸を押さえようと氷空はジャージの胸元をギュッと掴んだ。どうしてか物凄く嫌な予感がするのだ。突き落とされる様な不安が氷空の胸の中で渦巻いている。

「ああ、ここまで絶望的な状況になるのが偶然だとは考えにくい。だが、意図的にかと問われるとそうとも考えられない。偶然と思うしかないだろう」
「でも、外部と連絡が取れないなんて……!」
「氷空、心配するな」

そういって優しく笑う柳に氷空は納得はしないが彼の心配を煽らないよう微笑んで見せた。

「……そうだよね」

本当はこの時に気が付かなければならなかったのだ。既にこの時何者かが合宿内に入り込み、侵略を進めていることに。
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