終焉

□責任
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立海大の談話室の戸を開けると他のメンバーも暗い面持でそれぞれ椅子に掛けていた。柔らかい、だがどこか気を使ったような笑みで幸村は氷空と真田を迎える。

「氷空、おかえり。弦一郎、苦労を掛けたな」
「いや、大丈夫だ」
「……ただいま、ごめんなさい。朝早くから」
「気にするな、仕方のないことだ」

幸村がそういうと真田は氷空に自分の隣に座るように促し氷空を座らせ自分も席についた。二人が座ったのを確認して上座の幸村が話を始める。

「さて、みんなにも情報は行っていると思うけど、氷帝の向日が今日、死去した。さらに青学の坊や、不動峰の神尾も彼と同じ症状で寝込んでいる。

伝染病の疑いがあるが、俺達が素人判断はできない。それに桃城と坊やは感染経路があるけれど、神尾と向日にはない」

幸村が言葉を切ると柳が彼の後に続いた。

「さらには、この病は感染してからの潜伏期間から死に至るまでが非常に早い。俺たちでは何も対策をたてられないのが現状だ。

外部との連絡経路も未だつながらない。電波塔をなおすにせよ、まだ時間がかかるだろう。ここら一帯は住宅地帯がないからな」

解決法はないってことか、と微かに誰かのつぶやきが聞こえ、しばし、沈黙が走った。だれも何も言うべき言葉が無かったのだ。

「最後に皆、練習は各自で行うようにと決まった。

練習する気分でないものは行わなくて構わない。こんな気分で動けるほど強くないのが人間だから誰もそれは咎めないよ。

越前、神尾の見舞いは各部長の許可をとってから行ってくれ。皆、手洗い嗽と規則正しい食事摂取を心がけるように」

解散と幸村が告げると部員たちは席を立った。
氷空もふらり、と席を立つと自分の部屋へ戻った。そして手を掛けるとドアノブをひねろうとはせずに、ぽろぽろとその場にしゃがみ込んで涙をこぼす。

「……うっ……う……がく、と……っ」

青白い向日の顔が氷空の脳裏に浮かぶ。
自分のせいだ、どこかしらそんな思いが湧きあがる。私のせいじゃない……そう自分に言い聞かせても氷空の心は落ち着かなかった。

「氷空……」
「柳、くん……」
「すまない……。氷空」

柳は開口一番、謝罪の言葉を口にした。氷空は涙を拭いかけた手を止め、なにより驚いていた。

「え……柳くん……?」
「俺にもっと知識があれば、向日を救えたのかもしれなかった。だがこうしてお前を悲しませることになってしまった…。すまない」
「な、何をいって……柳君は何も悪くない!
どうして……」
「お前は一人で悩んでいるだろう?自分のせいだ、とな」
「………」

柳は氷空の手を取るとすっと立ち上がらせ、優しく髪を撫でた。

「お前のせいじゃない」




それを自分に言い聞かせた。
 

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