いつまでもふたりで

□3月22日
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「眠らないの?」

電気の落とされ、床頭台のランプだけが仄暗く光る跡部の寝室で澪は首を傾げながら跡部を見た。澪が還ってきたその日から跡部は澪を客間に1人で寝かせることはしなかった。いつも跡部のベッドで澪が眠りにつくのを彼女の手を握りしめて見つめている。そうしていつの間にか朝を迎えているのがこの頃の常だった。

跡部は澪を自分の傍に置いておかないと落ちつかないのだ。自分が自分の意志で眠りにいれば自分の傍から澪が消えてしまうのではないかと想像するたびに怖くなる。

彼のベッドに腰掛け、不思議そうな顔をして跡部を見上げる澪の頬にキスを落とすと跡部は表情を緩ませる。

「いいからさっさと寝ろ。肌に悪いぞ」
「……もしかして、景吾くん私に気をつかってる?」

不安に表情を陰らせた澪の手が掛布団を握る。その手に自分の左手を重ねて跡部は優しく空いている右手で澪の頬に触れた。

「バカ、んなわけねえだろ」
「それなら、景吾くんもちゃんと寝て?ちゃんとベッドで寝ないと疲れが取れないよ。邪魔なら私、客間で眠るから」

そういって澪が地に足をつけ、立ち上がろうとすると慌てたように跡部がそれを制止しようと澪の身体を抱き寄せた。

「行くな」
「景吾くん……?」

低く、澪の耳元で跡部が囁く。澪は跡部の背中に手を回すと優しく擦りながらどうしたの?と言葉を掛けた。

「俺様の傍から離れるな、お前がいないと不安になる」

小さく息を吐いて跡部は澪の髪に指を通した。その行動に澪は目を伏せて跡部に言う。

「……ごめんなさい、やっぱり私が原因だったんだ。それなら、あの……一緒に寝ない?」
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