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□バカな子ほど可愛い
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「さて……どうしようか」

暗い赤也君の部屋。
2日前、目覚めたときなぜか彼の部屋にいた。ついでに着ているのは彼のシャツ一枚だけ……つまり監禁されているのだ。

「全く……早く帰ってこないかな」

美代子自身、赤也のことを嫌っていたわけではないので別に恐怖感などなかった。正直、本気で抵抗すれば勝算はあるだろうと思うくらいの余裕はあるのだ。その手段を取らずに赤也を改心させるにはどうすればいいのだろうか、そればかりなのである。

がちゃり、と静かにドアが開いた。彼は両親、姉に内緒で美代子をここに置いている。見つかれば大変なのに、子犬でも隠し飼いしている心境なのだろう。

「なんだ、アンタ起きてたんだ」
「おかえり赤也君」

ぽいっと鞄を投げた赤也は美代子の後ろに回って美代子の胸に触れた。小さい子が玩具で遊ぶかのように胸の形を変えさせながら揉む。

「やっぱでけえよなあ……」
「はいはい、触っていいから私を家に帰して」
「やだ。アンタ外にいると先輩たちに色目使うじゃん」
「使わないって……どうしてそんなこというの」

美代子は縛られたせいで動かしにくい両手を使い、ゆっくり赤也の方に向き直る。赤也の言葉を無下に扱うとあとが面倒なことになってしまう。真剣な表情で赤也の瞳を見つめた。

「事実そうじゃん。今日だって先輩たち美代子のこと探してたし。副部長も柳先輩も丸井先輩にジャッカル先輩、柳生先輩ペテン師の仁王先輩まで。部長は今日は病院に行っててきてないから知らねえけど」
「そりゃ、人が行方不明になれば探すのは必須でしょうね」
「だからそんなんじゃないっての」
「私が赤也君だけのことを愛してるって事実だけじゃ不十分なの?」

ため息をつきながら縛られた手で赤也の髪に触れようとする。赤也はその手を掴むと指先に噛みついた。

「ん、何するの」
「アンタが俺を愛してても…外側からアンタを侵食していくやつらがいる。俺以外の男にアンタっていう存在が映るのが嫌だ」
「それじゃ、赤也君。私のことは外に出せないっていうの?このカーテンも閉め切った部屋で?他の男に靡く前に赤也君の前からいなくなりそうよ、私が」
「はぁ?……何言ってんの?」

わけがわからないといった表情をした赤也に諭す様に語りかける。ぺろりと歯型のついた指を舐め、自分の方へ赤也は美代子の身体を引き寄せた。

「難しい話になるけど……まず人間はね、ビタミンDが足りなくなると骨が脆くなるの。そのビタミンDは太陽の光を浴びることで体内で生成するもので食事だけではとても補えない。ビタミンDが足りなくなり、骨が脆くなることを骨粗鬆症というの」
「んで?」
「つまり、骨が弱くなってしまえば赤也君に抱きしめてもらうこともセックスをすることだってままならないわ。それに加えて私の身体はがりっがりの骨と皮だけになっちゃう。そんな私でいいの……?長生きだってできないよ。そんな身体じゃ。赤也君と話をするのだって疲れるに決まっているだろうし」

美代子がそういうとぎゅっと赤也は後ろから美代子の身体を抱きしめて首元に顔を埋めた。首筋に吸い付いたり噛みついたりしながら唸る。

「確かに、そりゃ困るな……」
「ね、そうでしょ?だからさ、一日10分でもいいから外に出してよ。そのくらい日に当たればビタミンDも生成されるって医学的に証明されているらしいし。別に一人で出せって言ってるわけじゃないんだから。赤也君同伴なら私が何をしようと止められるでしょ?」

内心、逃げようと思えば逃げられるんだけどね。と毒づきながら美代子が微笑む。しばらく悩んでいた赤也は顔をあげ、美代子をベッドに押し倒すとにやりと笑った。

「そうだな、俺がアンタを逃がさないようにすりゃいいだけか。いいよ、明日から散歩位になら連れてってやる、ただし朝な。

……それはそうと、アンタ俺ともっとセックスしたかったんだ、言ってくれりゃもっと頑張ったのにさ。ま、今からそのつもりだけど」

にやにやと笑みを浮かべて赤也が覆いかぶさる。美代子はそんな赤也を受け入れながら第1段階クリア、と心の中で呟いた。
 

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