終焉

□親戚
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「そう、アンタ不二先輩に用事?」
「ううん、ちょっと顔を見に来てただけ。周君と話すの久しぶりだからね。
会いたかったんだ、小さい頃は結構一緒にいたから」

いつもテニス以外では何事にも興味なさげな越前が割と真面目に氷空の話を聞いているのを不二は隣で見つめる。ふと軽いため息をつきながらどうして氷空は無意識に異性を惹きつけるのだろうと不二は思う。昔からそうだった。彼女は何か異性惹くものがあった。

不二によく似た笑顔、サラサラな栗色のセミロングの髪、バランスの良い体躯…溢れ出る優しさ。きっとそれだけではないのだろう。

「ふうん……そう」
「で、越前。手塚が呼んでいたのかい?」
「あ、はいそうッス」

越前の返事に不二は頷くと氷空の方に視線を向け微笑んだ。その笑みにどこか氷空は違和感を覚える。

「それじゃあ僕は行くよ。氷空も来るかい?みんな君に会いたいって言ってたし」
「うーん、まだ裕君にあってないから……。行きたいのは山々だけど時間も微妙だし、幸村君には3時には戻ってくるんだよって言われてて」

ちらりと氷空が腕時計を覗くと短針は2を過ぎ長針は4を通り過ぎようとしているところだった。親戚にあうからと無理をいって掃除を抜けさせて貰っているのに、門限まで過ぎてしまうと立海の選手に合わせる顔が無い。

「そっか、それは残念だな。裕太に会いに行くなら僕も一緒に行きたかったのに」
「ごめん、幸村君の言いつけは守らないとまずいから。……ところでルドルフの宿舎ってどこだっけ?」

そういえば、青学の宿舎は調べてきていたのだがルドルフの宿舎の場所を見ていないことに氷空は今更ながらに気が付いた。不二が答えようと口を開こうとするとそれより先に越前が口をはさむ。

「連れてってあげてもいいけど」
「え……?でも悪いよ」
「越前、珍しいね。君がそんなことを言うなんて」

すっと青い瞳をのぞかせながら不二が呟く。

「別に…暇だからッス」

帽子を深く被り直しながら越前が言った。
それなら、と氷空が越前に案内を頼むと不二は不機嫌そうな顔をしつつ、二人を送り出した。


素直はときに害を生むが利益を生むことの方が多い。
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