終焉
□犠牲
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翌朝のことだった。氷空の耳に訃報が舞い込んできたのは。
「桃城君が、亡くなった…?」
信じられないような表情をして立海大R陣全員が幸村を見つめる。だが幸村自身、困惑した様子で戸惑いながら言葉を紡いだ。
「今朝方、各校部長だけの招集があってその時に聞かされた。
原因はわからないそうだ。ただ、最近彼は体調が悪かったようでね、青学の人間はみんな夏風邪だと思っていたらしい」
シン……と談話室が静まり返る。無理もない、見知った人間が亡くなれば当たり前の事だ。それも、先日まで共にテニスをしていたというのに。
「氷空さん……大丈夫ですか?」
口元を押さえて幸村を見つめる氷空に心配そうに柳生が声を掛ける。柳生の手が氷空に触れるとふらりと彼女の身体はよろめいた。慌てて柳生が氷空の身体を支える。
「大丈夫……ありがと、柳生君」
「それで、ここからが本題だ。
俺たちは今この山奥に隔離状態だ。仮にあの土砂を乗り越え、谷を越え山を下りられたとしても来るとき分かったようにほとんど民家のない田舎道ばかりが続いている。
電話一本掛けるまでに3日は掛かってしまうだろう。この状況で外部に助けを求めるのは不可能だ。
それにこの暑さだ。彼の遺体はいくら冷房を入れられるといっても限度があるだろう。どうすべきだとおもう、弦一郎、蓮二」
「どう、と言われてもな…」
「………法に触れるが埋めるしかないだろう」
2人の声にもいつものような張りはなく、重い空気が談話室を包む。
「わかった……もう一度、部長の招集があるからみんなはここで待機していてくれ」
扉の音が大きく部屋に鳴り響く。氷空の頭の中では先日あったばかりの彼の姿が浮かんでは消えていた。