いつまでもふたりで

□6月16日
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夜、澪はひとり仄暗い彼の部屋の床についていた。広いベッドの中で澪は身を縮める、彼の寝具は彼女が1人で使うには広すぎる。全く眠りにつけそうにない澪は上体を起こし、床頭台の上に置いてある携帯を手に取った。今日はまだ6月16日、跡部が帰ってくるにはあと3日もある。

胸が締め付けられるように切なくなって、澪はギュッと彼の使う枕を抱きしめた。何を寂しがる必要がある、彼はもうじき帰ってくるのだ。そう思っていても、彼の秘密を知ってしまってからは電話越しではどうも気まずいのだ。電話越しに何を話していいのか分からない、電話越しでは彼への気持ちは1ミリも伝わらない。

携帯を元に戻し、再び身体を横たえると澪は自らの枕の下から彼女の部屋から持ち出した彼のブロマイドを取り出す。澪が何よりも好きだった、9年前の彼がテニスをしている姿がそれには収められている。それをそっと胸に当てれば、思わず涙が零れそうになった。この気持ちがなんなのかが分からない。切なくて苦しいのか……彼の行動が嬉しくて愛おしいのか、分からない。この気持ちは量れない。

澪は枕の下に写真を戻し、布団をかぶって彼の枕に顔を埋める。きっと跡部はまだ仕事中だ。次彼に電話ができるのは6時間後、早く彼の声を聞きたいと思いながら澪はそっと目を閉じた。
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