遠回り。

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____初めはこれだけのことだった。





『はるは賢いんだな。』



小学生のとき
人を褒めないお父さんに
そう言われて


__ただ嬉しかったんだ。




だから勉強した。

また、褒められたかった。







『そうだ。
私立の賢い中学校に入学させよう。
中学受験、頑張るんだよ。』




____褒められてから一年後

小学五年のときだった。




今回は褒められなかったけど


受験に合格したら、きっと…



その気持ちが私の勉強への原動力



___父さんに、認められたい。


『中学受験はうまくいったのか。
良かった。
父さんはこれからも期待しているぞ。』



必死で勉強したのが実を結んでか
難関校に受かった。




でも、褒められなかった。





なんで?



誰か私の存在を認めてよ。


…認めて














…あぁ



私って今まで何してたんだろ。












______
____________二年後




「はるーっ!!
ほらほらはやくー!

クラス、発表されてるよー!」



『あはっ!桐菜早い!
待ってー!』


私は中学3年になった。



仲の良い友達グループに入って

それなりに楽しく毎日を過ごしていた。






一応、今でも勉強は頑張ってるよ。


でも中学受験のころに比べたら

やる気が全然違うっていうか…








____何か違う。


そう感じずにはいられなかった。



何かもの足りない日々。

_____充実してない。

そう感じるようになったのはいつからだろうか。


いつの間にかクラス発表の
ロッカーに着いていたみたいで

ざわめく生徒たちの声がする。


もちろんそれは私たちも同じこと。



「あっ!!はる〜
おんなじクラスだよ!!イエーイ!」


『あっほんとだ!
桐菜、改めてよろしくね!』



よかった〜今年も桐菜と一緒で
なんかすごい安心感!!

「うん!!よろしく〜っ!


あ〜っ!黄瀬くん、
おんなじクラスだよぉ〜?」


『ちょ、ちょっとぉ〜桐菜〜!
やめてよー』


そう、黄瀬涼太は 
なにを隠そう私の好きな人だ。

なんて言うか、爽やかイケメン〜
っていう感じでもう、最高!!

しかも紳士で優しい!

「うっふふ〜。

はる、新しいクラス行こっ!」


『もっもちのろんー♪』





着いたのは 3ーB

これから私が
中学生活最後を過ごす教室。

『わぁー。知らない子ばっかりー。』


「そぉ〜?あっ!沙絵ちゃんいる!
はる!ちょっと話してくるね?」


答えも聞かずに沙絵ちゃんとやらに走りよっていく桐菜。

え、ちょっと待って私にどうしろと…?


進級早々このぼっち感…


………寂しい!!



しょうがないから席に座ることにした。


私、これから大丈夫かな…



『え〜と、席どこだろ。』





って…窓側の後ろ!やったねー♪







んで、隣の席はっと…










赤司征十郎……誰だ?


はぁ。よくわかんないけど

良い人ですようにーっ。




って黄瀬くんとは遠いー!

うわっ!桐菜と黄瀬くん隣じゃん!
くっそ〜!!




涙目さっそく運の良い席に座り

はやばやと隣に座っている
赤司くんであろう人のほうを見ると




赤司くんは綺麗に笑って
まみ
「…えっと。安藤はるさんだよね。
僕は赤司征十郎。よろしくね。」

と言ってきた。

……いきなり美青年だな。


でも正直、綺麗に笑いなれすぎてて気持ち悪い。


『あ、うん。よろしくー』



あれ。
赤司くん、なんか不思議そうにしてる。




『…どうしたの?』

「いや、なにも……くすっ
君は、おもしろいな。」

『えっ…。それってどういう…

「はる!!!」

どーんと私にぶつかってきた
…いや、抱きついてきたのはもちろん桐菜で


「ちょっと来てよはる!!」


赤司くんはちょっとおっかないし
桐菜のあんまり嬉しそうな顔に断れず…。



『…はいはい。ごめんっ!!じゃあまたね!赤司くん!』


「えーっ!はる、赤司くんと仲良いの?!」


『…え?
いや、隣の席だったから
少し話してただけだけど
……どうかした?』


「えぇーっ?!はる、知らないの?!

めーっちゃイケメンで
賢くて運動神経抜群の
あの赤司様じゃん!!

ほら、バスケ部主将の!!」



『……?』


「もーう!はるってばほんと、そういうの興味ないよねー!」 

『……。』

……桐菜はほんとそういうの大好きだよねー

なんて言い返してやろうかと思ったが

まあ、確かに赤司くんは
びっくりするほどイケメンだ…。

「隣の席?あぁー羨ましい!
今度紹介してよね!!」

『え、はぁ…。』


「やったー!!
あ、そうだー!呼び出した理由だけどー…。」

もったいぶるようにニヤニヤする桐菜になんだか腹が立つがそこはスルー。


『…で、何?』


桐菜は待ってましたとばかりに顔をきらめかせて

「黄瀬くんから、はるに……これ!!」



黄瀬くんから?!
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