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□午前5時、任務終了
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時刻は午前5時。
…ターゲットの死亡が確認された。
午前5時、任務終了
アスファルトには夜中まで降り続いた雨が染み渡っている。湿気と緊張感からか、今日の任務をパートナーとして組んでいたなまえはじんわりと額に汗を滲ませていた。
「はぁっ…てこずったね…。でも任務終了か…。」
「…引き上げるぞ」
濃霧と血の匂いが立ち込める中、明け方の街を後にする。
アジトに戻ると、リーダーの代わりに組織へ任務の終了報告メールを作成する。チームの中では俺が唯一、報告メール作成をリーダーの代筆として許可されているからだ。
ふと視線を感じてバスルームの方を見ると、バスタオルと着替えを持ったなまえがこっちを見て立っている。
「一人で入れねぇの?」
黙って頷いたなまえは俺の反応を伺っていた。
「わかったよ。すぐ終わる。先に入ってろ。」
パソコン画面に向き直ると、キーボードを手早く打ち、メールを送信した。
同じチームの仲間ではあるが、なまえは俺の女でもある。「付き合おう」とかいう言葉はなかったが、お互いが特別な感情を持っているのに気付いていたから、そんな言葉はいらなかったのだろう。
それにしても、そこそこ年が下の女だと思ってナメていたが体の相性は今までの女と比べて格別によかった。
だから俺はなまえの体を見るたびに気持ちに余裕がなくなる。それが唯一の弱みだった。
先に浴槽に浸かって隅で縮こまるなまえの後ろ姿はいつ見ても綺麗で、小さく感じた。
まだ暗殺の舞台に出て長くない為か、任務を終えると体の震えが止められない様だ。
今日だって小さく震えている。
初めは泣いてばかりで何も出来なかったはずの少女だったが、今や人を殺めることに対しての抵抗がこの程度になってしまったと言えばそれも考えものであるが…
なまえの正面に体を沈め、「そんな隅に座るな。…こっちに来い」と言うと、大人しく体を寄せた。
目下にはほんのりと甘い薫りを放つ入浴剤の色と劣らない様な白い肌をしたなまえが、哀しげな顔で俯いていた。
「気持ちもわかるが、いちいち気にしてたらやっていけねぇぞ?」
「わかってる…。もう大分慣れたから。でも変なの。体は正直だよね。」
そう言うと、震えている肩をぎゅっと押さえる。
「…別のこと考えろ。」
「……無理っ………ん……」
強引に唇で唇を塞いだ。
二人で入るには狭い浴槽内では逃げ場など、ない。
「や…何か…あつ…いっ…」
途切れ途切れに言葉を発するなまえは、浴槽の温度と、巧拙なキスに蕩けきっていた。
「ッはぁ…震え、止まってるぜ?」
「や…もっと…プロシュートで頭の中いっぱいにしたい…。」
首に手を回して苦し気な表情で俺を求めた。
ニヤリと笑うと、耳元で囁いてやる。
「…了解。」