assassino&cinderella girl

□リゾット×お風呂
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浴室の掃除を終わらせたななしは、浴槽に湯を張り終わるまで、リビングに居るリゾットの近くでしばらく時間が経つのを待っていた。

長方形のテーブルの真向かいに座っているリゾットは、机の上に肘を付き、組まれた指に額を当てて俯いている。

ななしはチームの者ではないが、テーブルの上に無造作に置かれた数枚の紙を見つめているリゾットの様子を見るに、任務に関して何か行き詰まっている事が分かった。

険しい表情に空気が重く感じられるが、立ち上がったななしは迷わずリゾットの元に向かう。



頭を抱えたまま、ふいに背後から優しく抱きしめられたリゾットは、ななしの香りに包まれた瞬間、顔を上げて後ろを振り向こうとした。

「ななし…、」

振り向き様にななしの名を呼んだと同時に、頬に優しく温かい感触が伝わる。ななしの柔らかい唇が触れ、リゾットの思考を停止させた。

「……リゾット…あんまり悩まないで…?」

自分の為に身を案じてくれたななしに対し、返って心配を掛けてしまった事に気付くと、リゾットの表情には光が差していた。

「…あぁ。すまない…もう平気だ。」

小さな顔を撫でてやると、お返しとばかりに頬にリップ音を立てる。すぐに紅く染まる顔には、恥じらいと驚きが入り混じっていた。

「…私じゃ分からないかもしれないけど…何かあったら言って欲しいの…。リゾットの事…一番分かってあげたいから…。」

首筋に擦り寄り、リゾットへの愛しさの溢れるななしは、その広い背中にそっと身体を預けた。

「…そうだな…。お前に頼るのも悪くはない…。じゃあ…聞いてくれるか?」

顔を傾け、視線を送るリゾットに快く頷くと、思わずはにかんだ表情を浮かべた。それを確認すると、リゾットは静かに口を開いた。



「…俺達……まだ一緒に風呂に入った事がないよな…?」

「………え…?」

話の脈絡が意味不明になり、ななしはリゾットから身体を離して改めてその真剣な表情を伺う。

冗談ではない。この無機質な表情は、リゾットが真面目な話をしている証拠だ。

「えと…任務の事じゃなくて…かな?」

「…?いや、任務の事で悩んだりはしていない…何故だ?」

唐突な言葉に、心配していた自分に馬鹿らしさすら感じる。

段々と冷静さを取り戻し始めたななしは、肩を落とすとトボトボと着替えを用意し、脱衣所へ向かった。

「(そっか…私がお風呂の準備しているのを見て…そんな事思い詰めなくてもいいのに…。)」

確かに付き合い始めてから、入浴を共にした事はない。ここは一応公共の場。あまり周りに気を使わせない様に、表面上はリゾットと密接すぎる所を見られたくないのが本音だ。

衣服を全て脱ぎ、長い髪を髪留めで纏め、バスルームのドアノブに手を掛けようと手を伸ばした瞬間、脱衣所のドアが開く音がした。

「…っ、リゾット…?や…、」

身体を隠そうとバスタオルを手にしたと同時に、リゾットに抱き寄せられた。突然の事に事態が飲み込めないが、胸の鼓動が落ち着かないままリゾットを押し返そうと力を込める。

「もうっ…離してよっ…!リゾットのえっち…!」

拒絶を示すも、その大きな身体が心地よくて、本気で抵抗しきれない自分がいた。

「…エッチで悪かったな。」

言い返す事も出来ず、唇を噛むと上を向き、リゾットと見つめ合う。沈黙の時間を置き、リゾットを受け入れる一言を発した。

「…えっちだけど…そんなリゾットが好き…。」

真っ直ぐな視線から逃れられなくなり、自然と背伸びをして、少し腰を屈めてくれている彼に腕を絡ませ、自分から唇を重ねていた。



「…湯加減いいかな…?」

「丁度いい…。」

リゾットの低い声がバスルームに響く。浴槽内の水の浮力で更に軽くなったななしの身体は、リゾットに後ろから抱き上げられ、緊張から小さく縮こまっていた。

「(リゾットの身体大っきいな…後ろからぎゅってされるの…好き…。)」

「(ななしは小さくて抱き心地がいい…髪を上げた後ろ姿も、いつもより色っぽくていいな…。)」

互いに寡黙な二人は、静まり返った浴槽内で身体を寄せ合わせている。

「…好きな人とお風呂に入るのは…結婚してからするものだと思ってた…。」

ぽつりと呟いたななしの一言に、リゾットは思わず笑ってしまった。

「な…何で笑うの!?」

「…いや…、本当…ななしは純粋だな…。」

からかう様に笑われてしまい、頬を膨らませてリゾットから離れようとすると、強く胸を掴まれて、その腕の中に囚われてしまった。

「あっ…!や…リゾットのばかっ…!も…知らないもんっ…、あぁんっ…!」

「…ななしの身体は…すべすべしていて柔らかい…。どうしてこんなにも気持ちがいいんだろうな。」

リゾットの手は大きく、ゴツゴツとしている。デスクワークをする仕事の手、組織のためにどんな闇も切り裂いてきた手。そして、自分を守るために戦ってくれたその手。

大好きなその手で愛されて、幸せで目の前が眩む。

「私の身体は…リゾットを癒すために柔らかいのっ…、」

吐息混じりに放った言葉に、リゾットは驚いた様な顔をして、直ぐに微笑んだ。

「なるほど…その通りだな…。」

「んっ…!?あぁんっ!」

胸の先端をくにくにと摘ままれ、背中を反り返らせて感じてしまう。ななしの好きな愛撫の場所や、力加減を知り尽くした指先は、彼女を快感の前に跪かせる。見えない鎖で縛り付け、何も抵抗出来ないななしをじっくりといたぶるのが、リゾットの中で快感になっていた。

「ななし…そんなに可愛い声を出されてはもっと苛めたくなってしまうだろう…。」

「あ……ああぁっ…、」

泣き出してしまいそうな声は、リゾットを異様な程燃え上がらせる。分かってはいるものの、甘い声が喉をすり抜けてしまう。

「ふぁっ…なんでっ…いじわるするのぉっ…」

そう口にすると、リゾットの愛撫の手が止まった。

「あっ…リゾット…?」

「…意地悪したら…俺の事嫌いになるのか…?」

「…っん…!」

首筋に熱い口付けを受けると、愛撫の手が止んだにも関わらず激しく胸が高鳴る。

「俺は…お前が可愛くて可愛くて仕方ないんだ…。それでは駄目か…?」

リゾットの声が震えているように聞こえる。感情の高ぶりを抑えるように、そして何かに怯えるような声。どんな事をされても、リゾットから離れる事などないのに…

「ううん…嫌いになったりしない…ほんとだよ…?」

「…っ、ななし…、」

リゾットの手を取ると、羞恥を堪えて自分の左胸に押し当てた。

「こんなにどきどきしてるんだもん…リゾットになら何されても…構わないっ…」

震えるななしの肩を後ろから見つめ、浴槽からその身体を抱き上げると洗面椅子に座らせて、シャワーの蛇口を捻った。

「ふぇ…リゾット…?んぅ、」

髪留めを解かれ、頭からシャワーを浴びせかけられると、思わず目を瞑る。すると、リゾットの手がシャンプーを泡だて始めた。鼻を擽るシャンプーの香りと、リゾットの大きな手に包まれ、心地が良くて眠気さえ感じられる。

「(…パパにお風呂入れてもらってた時の事…思い出すなぁ…。)」

その姿に亡き父を重ね合わせてしまい、じんわりと胸が温かくなる。色褪せない記憶が蘇り、あの時に戻った気分だ。

「…えいっ。」

「…んっ、ななし…?」

お返しとばかりに真正面のリゾットにシャワーを掛け、手を伸ばして、同じように優しくシャンプーを髪に揉み込む。

「…何か新婚さんみたいで恥ずかしいね…?」

「フフッ…新婚さんか…いい響きだな…。」

ななしの長い髪を包む泡が、シャワーの水流によって滑り落ちて行く。指を入れ、丁寧に洗い流すとななしからも同じ動作を受ける。些細な日常の仕草が、こうしてみれば幸せに感じた。

リンスを洗い流し、再びななしが髪を纏めると、その豊満な胸が揺れた。色の白い肌に思わず見とれてしまう。

ごく自然に触れ合い、何の下心もなかったはずのリゾットは、目を反らすとボディソープを手のひらで泡立てた。

「ひゃんっ…!?リゾット…いやっ、身体は自分で洗うからっ…」

「黙っていろ…。」

「…っんん!あぁ…!」

生クリームのような真っ白な泡に覆われていく身体。滑らかで吸い付くような綺麗な裸体に手を滑らせ、女性らしい膨らみも、細く引き締まった部分も、ねっとりと撫でていく。


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