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□高校生の日常
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チャイムがその日一日全ての授業の終了を告げると、決まっていつもの3人が楽しげに集まり、下校していく。














高校生の日常
















季節は春。また今年も新学年の季節が訪れた。







「あー私だけクラス離れちゃったよ…。」






「落ち込むんじゃないなまえ。休み時間はそっちの教室にも行くし、何しろ忘れ物がある時は借りにこれるじゃないか。」





「何ーっ?典明ってば私が忘れ物する前提じゃない。ねぇ承太郎!」






「お前は特に忘れ物が多いぞ。」





「あー承太郎まで!…いいもん、この苛々はゲームの世界でぶつけてあげる!今日は典明ん家集合ねっ。」





「唐突だなぁ…承太郎も時間大丈夫かい?」





「…ああ。」






なまえと花京院のやり取りを見て笑みを浮かべる承太郎。




三人は同じ学年で登下校を共にする間柄だ。なまえは紅一点だが、天然で抜けている所がありながらも時折頭のキレる冷静な一面もあり、騒がしい女子達とは一味違っている点では承太郎も親しみを持っていた。



人懐っこくてかなりゲームをやりこんでいるなまえは、初めは近寄りがたいであろう花京院ともすぐに打ち解けた。









「あ、桜大福ってやつ食べたい。」





なまえが指差す先には、和菓子屋ののぼり旗に書かれた桜大福の文字。







「進学祝いにどう?」







ほんのりと花の匂いが柔らかに溢れる通学路の中では、季節感を漂わせる誘惑が待っていた。







「ゲームしようと言ったり和菓子が食べたいと言ったり…学年が上がっても何も変わらないなあの子は。」






子を見る父親のような目で和菓子屋に駆け寄るなまえを見つめている花京院。承太郎は口癖の「やれやれだぜ」を呟いてなまえの方へ向かう。












「これからは典明の季節だねー。」



会計を済ませて、店外のベンチに座って桜大福を口にしたなまえがそう言った。





「ん?ああ、チェリーが出回る季節だからかい?」




「そうそう。嬉しいでしょ。ふふ。あ、承太郎桜アイスちょっと欲しいな!」





「ん。それ全部いいぞ。」






「やったぁ!ありがとうね承太郎。」







表情をふにゃりと崩し、幸せそうにアイスを口にするなまえの姿に承太郎も大きく息をつきながら笑って眺めていた。























「よーし、糖分補給した所で勝負に臨むわよ!まずはあまり糖分補給できていないはずの承太郎!あんたが最初の餌食になるがいいわ。」







「それが狙いだったのかなまえ…。いいぜ、そんな真似しなくともこっちには自信がある。」





普段クールな承太郎も、勝負をけしかけられると燃えるようだ。闘志が沸き上がり、なまえを余裕の表情で見下ろした。







「わかったから負けて僕の部屋で暴れるのだけは勘弁してくれよなまえ。」




「ま、負けないんだから!ギッタギタにしてやるわ!」







顔を赤くして花京院に食って掛かる。









「じゃあそろそろ決戦の地へ行きましょ。ご馳走さま。」





手を合わせてカップやスプーンを片付けると、ひらりとスカートを翻して桜並木へ駆け出していくなまえが、二人にはなんだか眩しく見えた。








「大人になってもなまえには変わらないでいて欲しいな。」




「あれ、承太郎珍しいじゃないか。そんなこと言うのは。まあ僕も同じ意見だが。」







暖かな春の陽気に負けないくらいの穏やかな日常が、この先も在りますように。




そんなことを願わずにはいられなかった。
















「(あー!また負けたぁ!悔しいーっ)」





「(なまえ!ベッドで暴れないでくれっ!)」




「(ピーピーやかましいぜ…それにしても10連敗かよ…。)」





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