Short

□風邪物語
1ページ/1ページ



「プロシュートって、人の心配ばかりして自分の事は後回しだよね。」

「…っうるせぇ…。」

反論しようとするが、喉の痛みが邪魔をする。こんな情けない姿は見られたくなかったが、プロシュートは正に今、風邪をひいていた。

元はと言えば、風邪をひいていたのは恋人のなまえの方。それは数日前に遡る。



「やっ…やぁっ!プロシュートに移っちゃうから…ちゅーはだめぇっ…!」

「黙ってろ…寝込んで弱ってるお前見てたら…ムラムラするんだよ…。ホラ、舌出せ。」

「…うぅ……、」



「その後エッチまでしたんだから、そりゃ移るよね。」

「仕方ねぇだろッ…畜生…お前だけピンピンしやがってムカつくぜ…。」

寝返りを打つと、なまえに背を向ける。

いつもなまえの前では、ビシッと決めていたかった。それが風邪をひき、ジャージ姿に無造作に乱れた髪。熱で火照った頬に潤んだ瞳。こんな有様を晒さなくてはならない事になってしまい、あの時なまえの忠告を無視した事に反省した。

「男ってのは…不便な生き物だぜ。」

「ん?」

ベッドに身を乗り出し、覗き込んだなまえが首を傾げた。

「悔しいがな…お前みたいに鈍感な女に惚れ込んじまった場合は、こっちがどんなにセックスしたくてもそれが伝わらない。だからプライドを捨てて頭を下げるしかねぇんだよ。女の方から誘ってくる事がないからな。」

「あぅ…ごめんね…。」

謝らせる気などなかったが、責任を感じたなまえが謝罪の言葉を口にした。

「…何でこんなに好きになっちまったんだろうな。」

「プロシュート……」

いつもより小さく見える背中越しに伝わる言葉に、胸がきゅっと狭まる。

「なぁなまえ…。」

「?」

「悪りぃ…隣…寝てくれるか?」

返事も返さず、直ぐにベッドに潜り込み、プロシュートの背中にしがみつく。すると、手を振り払われ、プロシュートが向き合う様にして寝返りをうった。

「ひゃ…、」

「…捕まえた。」

真正面からプロシュートの顔を見るのは、未だに苦手だ。その綺麗な顔を独占している自分が、信じられない。何故プロシュートは自分を選んでくれたのだろうか。そんな思いで苦しくなる。

「なまえ…、」

「…!や…恥ずかしいってばぁ…!」

首元にキスをしながら胸元に手を入れられ、下着の中でその手が蠢く。

「…極上の生乳…。」

「ばか!もうっ、むにゅむにゅしないでよっ…!」

もがいても逃れられない腕の中で、プロシュートの手のひらの熱を感じる。少し汗ばんだ手が、優しく胸を包み込む。それがただ単純に心地いい。

「んやああぁっ!離して…プロシュートッ…!」

「馬鹿か。嫌がってんのが可愛いんだろうが。」

″可愛い″

そう言われて顔を赤くすると、何も言えなくなる。しおらしく項垂れていると、プロシュートが調子付いて更に激しく胸を揉みしだく。

「…やべぇな。今勃ってる。」

「!?」

目を丸くした表情をからかうように、プロシュートは見下すような目で微笑んだ。それは高貴で妖艶な、いつもの瞳。

「プロシュートのばか…わ…私だって…、」

「…したいんだよな…?」

「……ッ!」

胸の突起をきゅっと摘ままれ、身体を震わせる。下半身がじんじんと疼き、胸のあたりが不透明な欲求でスッキリしない。

恋に無知なのは、これだから困る。自分にとって全ての初めてが、プロシュートだったから。

「治るまで…しないんだからね…。」

「分かってる…。それを励みに風邪は治すものだぜ…?」

額に優しくキスをされても、物足りない。深く、濃厚なキスがしたい。そして二人で気が済むまで求めあって。そのためにも、ただプロシュートが早く治る事を願うしかなかった。

−end−

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ