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□風邪物語
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「プロシュートって、人の心配ばかりして自分の事は後回しだよね。」
「…っうるせぇ…。」
反論しようとするが、喉の痛みが邪魔をする。こんな情けない姿は見られたくなかったが、プロシュートは正に今、風邪をひいていた。
元はと言えば、風邪をひいていたのは恋人のなまえの方。それは数日前に遡る。
ー
「やっ…やぁっ!プロシュートに移っちゃうから…ちゅーはだめぇっ…!」
「黙ってろ…寝込んで弱ってるお前見てたら…ムラムラするんだよ…。ホラ、舌出せ。」
「…うぅ……、」
ー
「その後エッチまでしたんだから、そりゃ移るよね。」
「仕方ねぇだろッ…畜生…お前だけピンピンしやがってムカつくぜ…。」
寝返りを打つと、なまえに背を向ける。
いつもなまえの前では、ビシッと決めていたかった。それが風邪をひき、ジャージ姿に無造作に乱れた髪。熱で火照った頬に潤んだ瞳。こんな有様を晒さなくてはならない事になってしまい、あの時なまえの忠告を無視した事に反省した。
「男ってのは…不便な生き物だぜ。」
「ん?」
ベッドに身を乗り出し、覗き込んだなまえが首を傾げた。
「悔しいがな…お前みたいに鈍感な女に惚れ込んじまった場合は、こっちがどんなにセックスしたくてもそれが伝わらない。だからプライドを捨てて頭を下げるしかねぇんだよ。女の方から誘ってくる事がないからな。」
「あぅ…ごめんね…。」
謝らせる気などなかったが、責任を感じたなまえが謝罪の言葉を口にした。
「…何でこんなに好きになっちまったんだろうな。」
「プロシュート……」
いつもより小さく見える背中越しに伝わる言葉に、胸がきゅっと狭まる。
「なぁなまえ…。」
「?」
「悪りぃ…隣…寝てくれるか?」
返事も返さず、直ぐにベッドに潜り込み、プロシュートの背中にしがみつく。すると、手を振り払われ、プロシュートが向き合う様にして寝返りをうった。
「ひゃ…、」
「…捕まえた。」
真正面からプロシュートの顔を見るのは、未だに苦手だ。その綺麗な顔を独占している自分が、信じられない。何故プロシュートは自分を選んでくれたのだろうか。そんな思いで苦しくなる。
「なまえ…、」
「…!や…恥ずかしいってばぁ…!」
首元にキスをしながら胸元に手を入れられ、下着の中でその手が蠢く。
「…極上の生乳…。」
「ばか!もうっ、むにゅむにゅしないでよっ…!」
もがいても逃れられない腕の中で、プロシュートの手のひらの熱を感じる。少し汗ばんだ手が、優しく胸を包み込む。それがただ単純に心地いい。
「んやああぁっ!離して…プロシュートッ…!」
「馬鹿か。嫌がってんのが可愛いんだろうが。」
″可愛い″
そう言われて顔を赤くすると、何も言えなくなる。しおらしく項垂れていると、プロシュートが調子付いて更に激しく胸を揉みしだく。
「…やべぇな。今勃ってる。」
「!?」
目を丸くした表情をからかうように、プロシュートは見下すような目で微笑んだ。それは高貴で妖艶な、いつもの瞳。
「プロシュートのばか…わ…私だって…、」
「…したいんだよな…?」
「……ッ!」
胸の突起をきゅっと摘ままれ、身体を震わせる。下半身がじんじんと疼き、胸のあたりが不透明な欲求でスッキリしない。
恋に無知なのは、これだから困る。自分にとって全ての初めてが、プロシュートだったから。
「治るまで…しないんだからね…。」
「分かってる…。それを励みに風邪は治すものだぜ…?」
額に優しくキスをされても、物足りない。深く、濃厚なキスがしたい。そして二人で気が済むまで求めあって。そのためにも、ただプロシュートが早く治る事を願うしかなかった。
−end−