三度目かよ!?

□桃色の彼女
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バスケ部のブースにたどり着き、入部届けを出した。
その際青峰が勝手にあやねの分の入部届けを出してしまった。
選手にはなれないため、マネージャーとして。
それに気づいたあやねは慌てて入部届けを受付から奪い、青峰に詰め寄る。



「何勝手に出してんだ。」



青峰はいつになく真剣な表情で人差し指と中指を立ててあやねに見せた。



「マネージャーしてくれたら、毎日ミルクを奢ってやる。しかも二本。」
「あ、お願いまーす。」



その言葉にあやねはすぐに紙を受付に戻した。
安い?中学生のお小遣いなめんな!
ミルク二本でも財布には痛い。
青峰も満足そうに見ていた。



「あやね、帰りにストバス寄って行こうぜ。」
「制服汚したくないから、一度家帰ってからな。」
「おーじゃあ、四時にいつものとこで。」
「了解、帰るか。」



二人でこの後の予定について話しながら家路についた。



【前の席の奴、でかすぎ…ってその前もかよ!】



次の日、新入生はそれぞれのクラスで説明を受けることになっていた。
担任の紹介、学校の施設の説明、教科書の配布など、様々な説明がある。
そして今、あやねは青峰とともに掲示板の前にいる。
新入生のクラスが発表されていた。



「大輝、クラスどこ?」
「オレはAだな、あやねは?」
「B。離れたな。」
「まぁ、隣だし。教科書借りに行くわ。」
「おい、忘れる前提かよ。」



ふざけあいながら、二人は教室に向かった。



「またな、あやね。」
「また…部活で?」
「あー…その前に昼飯だ。」
「じゃあ昼飯で、A組に行くよ。」
「おお。わかった。」



A組の前で青峰と別れ、あやねは自分の教室へと入る。
黒板に張り出されている座席表を見て、自分の席に着く。
あいうえお順で並んでいるため桃井であるあやねは左側の一番後ろの席だった。
席について前を見る。
しかし黒板が見えるはずの景色は人の背中により遮られていた。
紫色の髪の男。



「でかい…。」



つか身長何センチだよ。



「なぁ、ちょっといいか?」
「んあ?ふぁーひ?」
「お菓子置けよ。」



背中を叩けば前の男はまいう棒を銜えたまま振り向いた。
男は銜えたまいう棒を置かず、むぐむぐと口を動かして食べきった。



「で、なーに?」
「いや席を代わってほしくて、あんたがでかくて黒板が見えん。」
「…めんどいからやだ。」



一言だけ言って身体を戻そうとする。



「待て待て待て、代わってくれたら…。」



慌てて自分の鞄を漁る。
そして見つけたお菓子を男の前に差し出す。



「これやる。」
「これ…数量限定のまいう棒じゃん。代わる代わる。」
「やりい!」



すぐに荷物を持って席を立つ男に、よしとガッツポーズを決める。
たまたまコンビニで見かけ、物珍しさで買っていたまいう棒コチュジャン味。
買ったはいいがどうにも食べる気はせず、処理に困っていたところだ。
席を替わって後ろを向いたまま座る。



「サンキュー、えーっと。」
「紫原敦。」
「オレは桃井あやね、ありがとうな紫原。」
「女なのにオレって変なのー。」
「変で充分。」



にっこりと笑ってあやねは前に向き直った。
これで黒板が…。



「って、また見えねぇ!」
「む、なんなのだよ。」



また人の背中に遮られていた。
今度は緑色の髪の男。桃色の髪をした自分が言うのもなんだが、カラフルだなおい。



「…まぁ、見えないこともないしな。」
「一人で何をぶつぶつ言っている?」
「気にすんな…って、何それすっげー気になる。」
「これはラッキーアイテムなのだよ。」
「ラッキーアイテム?」
「おは朝の占いなのだよ。」
「へー…。」



男が手に持っているのはかわいいピンク色のウサギの人形。
似合わなさ過ぎる。
本当に似合わなさ過ぎる。
あやねはこらえていた笑いが漏れた。



「ぶっは…男がウサギって、しかもなのだよって…くくっ、あはは!」
「な、なぜ笑う!」
「あははは!腹痛え!」



お腹を押さえて笑っていたが少しして収まった。
しかしいまだに肩が震えている。



「はっ、はぁ…悪い。」
「本当だ。まったく。」
「ぶっ…いや、ほんと悪い。」



メガネをあげる仕草だけでもおかしいのか噴出してしまい、流石に失礼だと思ったのかすぐに謝った。
生理的な涙をぬぐいながら男を見る。



「で、結局何なのだよ。」
「黒板が見えにくいな、と思ってただけだよ。」
「ふむ、なら席を替わろうか?」
「そこまでしなくて良いよ。もう一回替わってもらってるから。
ただ、たまに聞いて言いか?」
「それくらいなら構わないのだよ。」
「サンキュー…。」
「緑間真太郎だ。」
「サンキュー緑間!オレは…。」
「桃井あやねだろう。聞こえていた。」
「やん、えっちい。」
「なぜそうなるのだよ!?」



緑間の反応にケタケタと笑っていれば担任が入ってきてお開きとなった。




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