第一部

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あの後シンドバッドは人攫いが頻繁に起こっているから気をつけろと注意をして、すぐに別れた。
そして家に戻るため歩き始めた。
本当はもっと見て回りたかったが一人でいるユナのことを思い出した。
家にいるから安全だとは言い切れない。
来た道は覚えている、迷うこともなく戻ったが家にユナはいなかった。



「一人で出て行ったのか…?」



さっきのシンドバッドの「人攫い」という言葉がクラウドの頭をよぎる。
部屋が荒らされた形跡はない。
焦る気持ちを抑え、セリアの元へと向かう。
ユナが行くとしたらそこしか思い浮かばなかった。また、そこにいなくてもセリアならユナの行きそうな場所を知っているだろう。
途中から駆け足になりながら店へと向かった。

店に着いて今度はセリアの姿が見えなかった。
クラウドはエティを捕まえてたずねる。



「すまない、セリアがどこにいるか知らないか?」



いきなり腕をつかみ問いかけるなど不躾だが、エティは怒る様子もなく。
むしろ困惑したようにクラウドの顔をみた。



「さっきユナちゃんとアンタを探しに行ったよ?忘れ物を届けるとかで。」
「わかった。もし二人が戻ってきたら伝えてくれないか、迎えに行くから待っててほしいと。」
「ええ、わかったわ。」
「夕暮れにもう一度ここに来る。」



こくりとエティはうなづいたのを確認してクラウドはまた走り出す。
二人でいるなら問題ないかとも一瞬考えるが万が一のことがあってはまずい。
とりあえず無事な姿を確認したい。
そう思いながら街を走る。



+++



セリアとユナは手をつないで歩いていた。



「もう、だめでしょう?勝手に持ち出しちゃ。」
「だって、綺麗だったんだもん。」



ユナの持つかばんの中にはクラウドの赤く丸い石のようなものがあった。
クラウドを運んだときポケットから落ちてきた。
初めて見た綺麗なものにユナは心を奪われ手に取った。
起きたときに返そうと思ったがすぐに出て行ってしまったため、どうしようもなくセリアの下に来た。



「見て回るっていってたからなあ、どこにいるんだろう。」



港の方まで見に来たがクラウドは見つからなかった。
探しているうちにだんだん日が傾き始めていて。
もしかしたら裏路地に迷い込んでいるのかも、とセリアたちは裏路地に足を踏み入れた。
それを見ていた影に気づかず。



+++



夕暮れになりセリアたちを見つけられずクラウドは店へ一度戻った。



「あんた!ちょ、早く!」



着いた瞬間エティに腕を引っ張られ店の奥へと連れて行かれた。
戸惑いながら入れば中にはユナとクーフィーヤーを被った青年がいた。
そしてユナが泣いているとあれば穏やかではない。



「何があった。」
「ひっく…おにい、ちゃ!」
「ユナ、セリアと一緒じゃなかったのか?」



青年に声をかければ気づいたのかユナが顔を上げクラウドに抱きついた。
クラウドは受け止めて背中を撫でながらたずねるがユナは泣いているばかりで答えることができず。
青年に説明を求めるように見上げた。
相手もその意を受け取り話した。



「私はジャーファルといいます。いまシンドリアで起きている人攫いのことは知っていますか?」
「ああ、だから探していたんだが…まさか。」
「おそらく。私が保護したときにはセリアという女性はおらず、この子だけでした。」
「くそ…。」



恐れていたことが起こってしまった。
自分のふがいなさに嫌気が差す。
そんななかユナが声を出した。



「ごめんなさっ、ユナ…これを返そうと思ったの。
そしたら知らない人に捕まって、セリアが逃げてって。セリア、ユナのせいで!!」



ぼろぼろと泣きながら自分を責めるユナの姿が痛ましい。
これ、とはクラウドが旅をともにした召喚獣シヴァのマテリアだった。
なぜここにあるのか、という疑問はあるが今はそれどころではない。



「ユナ、セリアはどこに連れて行かれたかわかるか?」
「わかんない…。」
「そっか…なぁユナここでしばらく待っててくれるか?」
「え…?」
「セリアを探してくる。」
「待ってください!一人では危険すぎます!」



ジャーファルが口を挟む。
人攫いの目的が女子供であろうとも、一人の行動は危険だ。



「ならあんたも行くか?」
「そういう問題ではありません!どこを探すというのですか?
犯人の特定も、潜伏場所ですらつかめていないんですよ!」
「ならなおさら一人でやる。」
「ですから!一般人を危険にさらせるわけがないじゃないでしょう!」
「あんたはどうしてほしいんだ。」



何を言っても聞き入れないジャーファルにクラウドはあきれ気味に言う。
あれもだめこれもだめ。
だったらどうしろというんだ。



「私たちに任せて、おとなしく家にいてください。」
「…だがセリアは連れて行かれたんだろう。」
「それは…。」
「オレはオレのやりたいようにする。あんたたちはあんたたちで勝手にしろ。」



意地の悪いことを言っているという自覚はあったが、とめることはできなかった。
だいぶ自分も頭にきているらしい。
止めるのも聞かず、エティにユナを預け街へ出て行った。





うむむ…やっぱり漫画キャラの出番が少ない。

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