第一部

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すべてを話す?
自分でも信じられないような話をどうして他人が信じられる?



「話しなさい、あなたがどうやってこの国に入りどうしてこの国にやってきたのか。」
「……。」
「黙秘は許しません。」



紐を引っ張られなす術もなくクラウドは倒される。
ぴたりと首筋に当てられる冷たさ。
目だけで確認すれば眷属器の刃を持つジャーファルがいた。



「ジャ、ジャーファルさん!やりすぎですよ!」
「そうだぜ、そいつは恩人っすよ?」



ヤムライハとシャルルカンが声をかけるが依然として刃をのける気はないジャーファル。
むしろ手に力をこめてクラウドの首筋に押し付ける。
ぷつと血が一筋流れる。



「あなたも死にたくないでしょう?
早く言いなさい。」
「はっ…どうせ。」



信じないくせに。



「哀れだな、クラウド。」
「!?」



クラウドはあたりを見回す。
聞き間違えじゃない、間違えるわけがない。
あいつの声だ。
けれどシンドバッドも、八人将も聞こえていないようだった。

その瞬間、急激な吐き気がクラウドを襲う。



「はっ…ぐ、ぅ!!」
「っ、ジャーファル!すぐに離せ。」
「は、はい!」
「誰か医者を!」
「聞こえるかクラウド、かまわん吐け。」



医者を呼びにヤムライハとピスティが部屋を出て行く。
シンドバッドは拘束していた紐をはずし、楽な体制にさせる。
けれど一向に晴れる気配のない吐き気にクラウドは胃からこみ上げてきたものを床に吐き出した。



「はぁ、は…。」
「クラウド、平気か?」
「シン彼の容態は。」
「…酷く体力を消耗している。」



シンドバッドはクラウドをソファに移し背中を擦っていた。
その中クラウドは吐き出したものを見ていた。
吐き出したのは黒く染まった水だった。
クラウドにとっては見覚えのある水。
危険だと教えなければ、けれど体が言うことを聞かない。



「シ、シンドバッド王!」



焦ったシャルルカンの声がシンドバッドにかけられる。
振り返れば黒い水が形を変えていた。
徐々に形を変え、人型になる。



「哀れだなクラウド…哀れで、情けない。私が一番見たかった姿だ。」



銀色の長い髪と刀身の長い刀。



「セフィ…ロス!」



息も絶え絶えに名をつぶやく。
ソファを見下ろすその姿は依然と変わらない、幼いクラウドが尊敬していた英雄の姿だった。
そして自分の大切な人々を殺した宿敵の姿だった。



「なっ、どうやって。」
「マスルール!シャルルカン!」



驚くシンドバッドを背にジャーファルが指示をする。
すぐさま二人はセフィロスに攻撃をする。
しかしその攻撃はセフィロスの体をすり抜けた。
攻撃は当たっていた、しかし当たった瞬間水に変わった。
全員が驚きを隠せない。それに一切気にした様子はなく言う。



「なぁ、クラウド。教えてくれ。
大切な人々と引き離され、一人異世界に堕とされた気分はどうだ?」



クラウド以外の存在が見えていないかのように不敵に笑った。



+++



予想外のことが起きた。
はじめはクラウドを引きずり込みそのままライフストリームに連れて行くつもりだった。
けれど子犬と古代種の邪魔が入った。
クラウドを元の場所に戻そうという力と連れて行こうとする力が反発を起こし結果、クラウドはまったく違う“セカイ”に飛ばされた。



「子犬も古代種も余計なことをしなければよかったんだ。」



守ろうとして逆にクラウドを一人にしてしまった。



「お前を助けてくれる者もお前が助ける者も誰一人ここにはいない。
お前は独りだ。」



ああ、たまらない。
いつも自分の前に立ちはだかり、敵対してきたクラウド。
何をしても決して最後まで折れることのなかった意志が今目の前で折れようとしている。
得も言われぬ快感がセフィロスの体を走る。

折れて堕ちたお前を愛でてやろう。





なぜ出てきたセフィロスよ!!←
あれ、出てこない予定だったのに…。

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