第一部

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夜が明け、太陽が昇りきってからクラウドは目を覚ました。
一眠りをしたからか昨夜ほど取り乱してはいなかった。
せっかく隠していたことがセフィロスによって明らかになってしまった。
質問攻めにあうと思っていたが…シンドバッドは無理に聞かないといった。



「(胡散臭い奴と思っていたけど…いい奴なのかも。)」



クラウドの中でシンドバッドの好感度が上がった。
起き上がろうとぼやけた視界で横に向く。
すると…。



「は…?」



目の前に素肌があった。
ぴしりと固まって、思わずやってしまった。



+++



ジャーファルがそろそろ目を覚ますだろうとお粥を持ってクラウドがいる部屋に向かえば、扉の前に目的の人物が立っていた。
クラウドもまたジャーファルに気づき困ったように眉を下げた。



「どうかしました?」
「…お湯を用意してくれないか?」
「お湯?お風呂なら案内しますよ?」
「いや…。」



言いにくそうに頬を掻く。
風呂には入りたい、が今はそれどころではない。



「あの本当にすまなかった。」
「はい?何がですか?」



クラウドは首をかしげるジャーファルに黙って部屋の扉を開ける。
扉の前に立っていたのは誰か来ないか待っているためでもあったが、誰も部屋に入れないためでもあった。
扉が開けられれば中から冷気が流れてくる。
熱帯のシンドリアではありえないことだ。



「なっ、え…シン!?」



中では裸のシンドバッドの氷付けがあった。
一国の王のこんな姿は誰にも見せられないだろう。



「普通の氷じゃないから死ぬことはないけど、この姿のままは。」
「ええ、そうですね。すぐヤムライハを呼んできます。」



お湯を用意するよりヤムライハの魔法の方が早いだろう。
お粥をテーブルに置きジャーファルはヤムライハを呼びに行った。



+++



「いったい何をしたらこうなるんですか?」



ヤムライハが部屋に来て氷を溶かしていく。
見事なまでの氷付け。こんな魔法は見たことがない。
しかも中のシンドバッドが生きているというのも驚きだ。
視線を向けられクラウドも今朝のことを話す。



「目が覚めたらすぐ横に裸のそいつがいて、思わず。」
「ああ…。」
「……。」



納得したようにヤムライハはうなづく、ジャーファルもまた頭を痛めて額に手を当てる。
二人ともその場面はすぐに思い浮かぶ。
はぁ、とジャーファルはため息を吐いた。
そうこうしているうちにシンドバッドの解凍が終わった。



「んん?おー、おはよう。」
「おはようじゃないですよ!あんた何してんですか!」
「うお、な…何だ?」



シンドバッドにジャーファルは詰め寄った。
眠っていたら服を脱ぎだす癖のある王だがクラウドの看病だからそんなことはしないと思ってはいたが、甘かったか。
王だというのに臣下に説教されている様子は見ていて面白いものがあった。
クラウドはソファに座りジャーファルの用意したお粥を食べながら見ていたがヤムライハに腕を引かれる。
ヤムライハは興奮した表情で言った。



「ねぇねぇ、あの魔法どうやったの!?
それよりあなた魔法使えたのね!」
「ヤムライハ。」
「あ…すみません。」



それを止めたのはシンドバッドだった。
昨夜の探らない、という言葉を守っているようだ。
八人将の全員にも話は伝わっているようで、ヤムライハもすぐに黙る。
けれども聞きたくて仕方ないのかうずうずとクラウドを見ていた。
答えることもできずヤムライハからお粥へと視線を移す。



「じゃあ、オレのことを話そうか!」



話を変えようと手を叩いてシンドバッドは笑いかけた。
クラウドのことも知りたいが、自分のことを知ってほしかった。



「妾の主に手を出した不届き者であろう?」



突如聞こえた女性の声に全員の目がクラウドの背後で止まる。
クラウドもまた背後から来る冷気にお粥を食べる手が止まる。



「…シヴァ?」
「なんじゃ?妾の愛しい主よ。」
「なんで出てきたの?」
「そなたが心配で心配で…会いたかったのじゃ。」
「朝、会ったよな。」
「そこな男が不埒なことをしていないか不安で。」



朝のことをまだ怒っているのかシンドバッドを睨みながら言った。
すっかり冷めてしまったお粥に箸をおいて、額を押さえる。
アイツもシヴァもなんで勝手に出てくるの。



「…オレ手出されてないから。」



これだけは言っておかないと自分の身の潔白のために。





あれ、前までシリアスだったのに。
シンドバッドを氷付けにしたのは言わずもがなシヴァです。

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