第一部

□16
1ページ/1ページ




夕時を告げる鐘が鳴りクラウド達は話を止めた。
正確には鐘の音を聞いたジャーファルの叫び声で止めざるを得なかった。
ジャーファルの叫び声の原因は。



「きょ…今日の執務、終わってない。」



自他共に認める仕事人のジャーファル。
まったく終わっていないであろう自分の机の上を思いながら、がくりと床に突っ伏してしまった。



「だ、大丈夫か?」



クラウドが近づいて肩に手を置くが、ジャーファルはふふふと妖しげに笑って立ち上がった。


「クラウドはシン達と夕飯に行ってください。
私は篭ってきます。」
「ああ…頑張れ。」
「シン、今日はお酒を飲まずに執務室に来てくださいよ。」
「ギク…お、おう。」



最後にシンドバッドに釘を刺してからジャーファルは出て行った。



「…クラウド、今日も遅いし泊まっていけ。」
「ああ、すまない。
話も途中で終わってしまった。」
「脱線させたのはこっちだから、大丈夫だ。
食堂へ案内するよ。」



ジャーファルの背中を見たままシンドバッドとクラウド、ヤムライハはうなづいた。
そしてシンドバッドの案内のもと食堂に向かった。



+++



「すごい…。」
「凄いだろう、好きなのを選んで良いんだぞ。」



食堂に行けば多種多様な料理がテーブルに乗っていて、もともと食が細いクラウド食欲がそそられる。
人数の多い王宮の夕食はバイキング形式なようで皿を持ちながらきょろきょろと目移りさせる。



「よー、悩んでんのか?」



どれを取ろうかと迷っていればシャルルカンがクラウドの肩に手を回してきた。
彼の皿の上にはすでに大量の料理が盛られていた。



「どの料理がうまいか教えてやるよ!
なんと言っても一番のおすすめはパパゴラスの丸焼きだ!」
「丸焼きはちょっと…。軽いものがいい」
「何だよ、つれねーな。軽いものなぁ。」



愚痴を言いながらもちゃんと軽いものを選んでくれクラウドの皿に載せていく。
ずしりとした重さを腕に感じたあたりでシャルルカンを止めた。



「すまない、これで良い。
えっと…。」



会話はしたことがあるが名前を聞いたことがなかった。
けれどいまさら聞くのは何か失礼なような気がして素直に聞くことができなかった。
そんなクラウドの様子がわかったのかシャルルカンは、あーそうか、と頭を掻いて名前を言った。



「オレの名はシャルルカンだ。」
「シャルルカン、覚えた。ありがとうシャルルカン。」
「おう!お前はクラウドだろ?」
「ああ。」
「よろしくな、クラウド。」



にっこりと笑ってからまだ料理を取りに行くようで颯爽と去っていった。



「そういえば…シンドバッドは。」
「きゃあシンドバッド様〜。」
「今日はお酒飲まないんですの?」
「ああ、ジャーファルに止められていてな。」
「え〜残念。」
「………。」



一緒に来たはずなのだが、と周りを見れば女性に囲まれたシンドバッドを見つけ、見なかったことにした。
今朝にあがった好感度が少しずつ下がっていく。
空いている席を探せば腰に衝撃がきた。
料理を零さないようにバランスを取りながら振り向けば小さな子供が抱きついていた。
子供といっても昨夜王の謁見室にいたから八人将には違いない。



「……誰。」
「ひっどーい!昨日会ったでしょう?」
「名前聞いてない。」
「あ、それもそっか。」



私はピスティよ!と元気よく言うものだから思わず頭を撫でてしまった。



「子供扱いしないで!」
「わ、悪い。」



ぷんすか怒って去ってしまった。
なんだったんだ、と思いながら再び空いている席を探す。
そうしていれば今度は肩を叩かれた。
振り向けば長身の青年がいた。
誰、と一瞬思うがクラウドには見覚えがあった。
昨夜自分を抱えてセフィロスから離そうとした人だ。
名前は確か…。



「マスルール?」
「あたりっす。あっち空いてます。」
「ああ、ありがとう。」



皿を持って言われた方へ移動する。
席に着けば向かいにマスルールも座った。
それと同時に目の前の机に置かれた大量の料理。
クラウドが皿一つに対して、マスルールは山盛りの皿が六つ。



「…そんなんで足りるんすか?」
「むしろそんなに食べるのか?」
「オレいつもより少ないっすよ?」
「オレはいつもより多い。」



お互い信じられない、と顔を見合わせた。
少しして食べ始めた。





八人将と会話をしたかったのですが…三人。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ