第一部

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まずはオレの“セカイ”、オレ達の話をしよう。
そうクラウドは切り出した。



+++



ライフストリームと呼ばれる命の流れがあった。それは星を巡り、星に住むすべての命の源。
神羅カンパニーがそのライフストリームを汲み上げ魔晄エネルギーに変えて人々の生活はとても豊かなものとなった。
神羅カンパニーもまた大きな権力を得た。
そして軍を作った。



「神羅軍には一般兵とは別にソルジャーと呼ばれる特別な兵士がいた。」



ある細胞を埋め込まれ、魔晄を浴びたソルジャーは、驚異的な攻撃力を有し身体能力もまた高い。
一般兵とは比べ物にならないほどの特別な兵士たち、それでもまだ彼らは人間だった。
その中でも群を抜いた強さを誇ったのはセフィロスだった。

英雄セフィロス。

彼に憧れを抱き、神羅軍に入ったものは少なくない。
かつてクラウドがそうだったように。



「ここまでは大丈夫か?」
「あー…ちょっと待ってくれ。」



一度話を止めたクラウドにシンドバッドは頭の中で整理する。

ライフストリームというのはこちらで言うルフの大いなる流れ、といったところか。
ソルジャーが金属器持ちのような者。

自分の知るものと置き換え何とか理解しようとする。

英雄セフィロスも…ん?
昨夜、突然現れたのアイツもセフィロスと呼ばれていなかったか?
シンドバッドが顔を上げてクラウドを見れば何を言いたいのか理解したのだろう。
クラウドはうなずいた。



「英雄セフィロスはある日狂ったんだ。」



任務で赴いたクラウドの故郷ニブルヘイム、そこで知った事実と、起こった悲劇。



「普通のソルジャーは魔晄を浴びた人間だ。けれどセフィロスはまだ母親の胎内にいるときからある細胞を埋め込まれていた。
セフィロスだけは生まれたときからソルジャーだった。」



実験の果てに生まれたセフィロス。自分は博士の狂気の産物。
そのことを知ったセフィロスは狂った。
すべてを恨み、すべてを壊そうと考えた。



「そして村人を殺し、村に火を放った。」
「!?」



シンドバッドは目を見開く。
そこは、その村は…クラウドの故郷だろう。
しかしクラウドは目線を合わせないままに話を続けた。

セフィロスを追いかけたどり着いたところでは一緒に任務についていたトモダチが深手を負っていた。
それを見てクラウドは頭が真っ白になった。
村が焼かれ、親は殺され、トモダチまでもが傷つけられた。
尊敬していたのに憧れていたのに、許さない許すものか。
真っ白な思考を暗い感情が支配する。
トモダチの剣を手に取り、セフィロスに向けた。



「多分、セフィロスも油断してたんだと思う。
オレは一般兵だったし。」



その油断がセフィロスの死を招いた。



「ちょ…ちょっと待て、セフィロスは死んだのか?
だったら昨日の…。」
「肉体は死んでも、その精神は生き続けた。
セフィロスに埋め込まれた細胞がそれを実現させていた。
いままでに二度、セフィロスは蘇った。」



そしてまた、セフィロスは蘇った。
そこにあるのは自分を死に追いやったクラウドへの執念だけ。
けれど彼はまだ未完全なのだろう。
今までは蘇る身体があった、けれども今回はなかった。
実体がない、攻撃を仕掛けてこなかったのがそれを証明している。
もしセフィロスが身体を手に入れたら?



「でも今まで倒してきたんだろう?」
「仲間がいたから、オレは戦えた。
独りでは…戦えない。」



戦闘力の問題ではない、クラウドの精神力の弱さだ。
それは変えようのない事実。
独りではだめなんだ。
でもここに仲間はいない。



「だから、頼みがある。」



仲間になりたい、とは言わない。
シンドバッドにも仲間はいるし、出会って間もないクラウドを仲間にはできないだろう。
たとえシンドバッドが許しても彼の仲間は良い顔をしない。
だから、仲間じゃなくていい。ましてや家族でなくてもいい。
でも独りは嫌だから、あつかましいかもしれないけれど…もし許してくれるのならば。



「友達になってくれないか?」



弱い自分を支えてくれる存在になって欲しい。
頑張れ、と背中を押してくれるだけで良い。
守ってくれなくても良い。

オレに守るものをください。
戦う理由をください。





主人公の過去は語るには難しい。

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