第一部

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突然の乱入者に気を取られ、クラウドが気づいたときにはセフィロスの姿はなかった。
仕留め損ねたと去ったであろう方向を睨んでいたクラウドの元にヤムライハがやってきた。
治療しに来たのだろうクラウドの腕を取り、まだ刺さったままの氷を溶かし始めた。



「…前も氷を溶かしていたな。」
「ちょっとやめてよ、私が氷を溶かすしか脳のない女みたいじゃない。」



シンドバッドを氷付けにしたときも溶かしていたのはヤムライハだった。
そんなクラウドの言葉にヤムライハは少しむっとして怒り、唇を尖らせた。
目に見えて不機嫌になってしまったヤムライハにクラウドは自分の言葉が足りなかったと慌てて言いなおした。



「すまない、感心してたんだ。
オレが使っていた魔法はほとんどが攻撃的で単純な魔法だったから、こうやって人体を傷つけないように氷を溶かすことなんてできない。
それに、オレたちは古代の知識に頼っていたからな身体ひとつでは魔法すら使えなかったし。
だから単純に純粋に、凄いなって。」



照れもせずに言いきったクラウドにヤムライハの怒りは飛んで行き、こみ上げてきたのは恥ずかしさだった。



「ばっ…バカじゃないの!」
「え、なんで?」
「はいっもう終わり!」



ばしっと包帯を巻き終えたところを叩き、クラウドの腕を離す。
一方クラウドは何故怒られたのかもわからず首をかしげるだけだった。



「なぁー!お前クラウドっつーのか?」
「きゃあっ、ちょ…何すんのよ!」



微妙な空気を裂くように二人の間に黒が割り込んできた。
割り込む、と言うよりヤムライハを押しのけてジュダルが現れた。
少しはなれたところで、シンドバッドとジャーファルが頭を抱えている。



「……誰だ?」
「んあ?オレか?オレはジュダル。
煌帝国の神官でーす。」
「神官?」
「ちなみにオレはマギだぜ!」
「マギ?」



人懐っこい笑顔を浮かべながらクラウドに近づく。
嬉しそうに説明するがクラウドには神官もマギも聞いたことのない言葉なので理解できなかった。
頭にハテナを飛ばしながらシンドバッドの方へと視線をやれば頭をかきながら説明をした。



「…と言うことだ。」
「なんとなく理解した。」
「良かった、で?ジュダルは何しに来たんだ。」



クラウドがうなづけばシンドバッドはジュダルへと顔を向けた。
顔見知りとはいえジュダルは敵だ。
王宮まで来て勝手は許すことができない。

だが、真剣なシンドバッドの表情に対しジュダルは笑顔で言った。



「観光!」



腰に手を当てて堂々と言い切った。



「神官って暇なのか?」



ポツリとつぶやいたクラウドの言葉を否定できるものはいなかった。



+++



「……何故だ。」



シンドバッドが心底不服そうに言葉を吐いた。



「どうした?」
「どうしたんだよ、歳か?」



クラウド、ジュダルの順にシンドバッドに言葉を返す。
ちなみに三人がいるのはシンドバッドの執務室。



「何故だ!何故オレの部屋で、オレは仕事をしていてお前達は仲良くお茶してるんだ!」



ついにシンドバッドは机を叩き立ち上がった。



「何故って、シンドバッドが言ったんだろ?
観光とはいえジュダルを一人にするのは危険すぎるって。」
「確かに…。」



ジュダルの観光宣言の後、帰りの定期便までシンドバッドが監視することになった。
しかしシンドバッドも仕事があり、ジュダルはジュダルでクラウドに興味を持ったようで話がしたいといって聞かなかった。



「早くしねーとシンドバッドの分も食っちまうぞ?」
「はぁ…オレたちは敵だよな?ジュダル。」



自由すぎる。
額を押さえてシンドバッドはため息をついた。



「シンドバッド、迷惑なら出て行くが…。」
「いや、いい。むしろいてくれクラウド。
ジュダルと二人きりは嫌だ。」
「そうだぜクラウド、もっとお前の話を聞かせてくれよ。」



一応提案はしてみたが、すぐに二人に却下される。



「というか、ジュダルは何故クラウドにこだわる。」
「そりゃお前あの戦いを見たら興味出るに決まってんじゃん!」



あの時のジュダルの攻撃はそう簡単に避けられるものだとは思っていなかった。
クラウドが止めを刺す瞬間。
双方が一番外敵に油断する瞬間。
だから、セフィロスもクラウドも重症だと思った。
しかしジュダルの思惑に反し、二人ともたった一、二ヶ所の怪我ですんだ。

純粋に凄いと思った。
だから興味を持った、金属器なしであれほどの強さ。



「はぁ…だから見せたくなかったんだ。」



シンドバッドとしてもこうなることは予想していた。
だから隠そうとしていた。
まぁ、それは敵わなかったが。
もう何度目かになるため息を吐き出してシンドバッドは仕事に手をつけた。



+++
久々の更新がこんなものですみません…。
新学期が始まっててんてこ舞いなもにです。orz
遅くなって本当にすみません。
黒河桔梗様リクエストの『クラウド成り代わり主がセフィロスと戦う姿を目にしてジュダルに気に入られる。』をぶっこみました。

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