第一部

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次にクラウドが目を覚ましたのは夜明けだった。
カーテンのない窓から見える朝日に照らされていく見知らぬ景色。
夢じゃなかった、と落胆を隠せない。
いや、落胆なんて軽いものじゃない。もっと暗く、もっと辛い。



「っ…は、く。」



ぐしゃりと前髪を握り、浅く息を吐いてこみ上げる涙を耐える。
泣いたらまた折れてしまう。
また、立ち止まってしまう。
やっと前を向く覚悟ができたのだ。
支えてくれた仲間のためにも励ましてくれたトモダチのためにも、ここで折れるわけには行かない。




「あいつの思い通りには、ならない。」



+++



完全に日が昇り、街が活発になってきた頃に落ち着いたクラウドは部屋を出た。
出た先はまた部屋だった。おそらくこちらはリビングだろう。
昨日はわからなかったが、この家には電気製品がひとつもなかった。
石の壁に木の扉。自分の寝ていた布団も床に大きな布が敷いてあっただけで。
そういえば、セリアやユナが着ていた服もクラウドのものとはだいぶ違った。
かなり文化が違うようだ。



「オレの剣はどこだ。」
「…こっち。」
「っ…あ、確かユナか?」



ばっと振り返ると部屋の端にユナがいた。
その隣にはクラウドの剣が立てかけてある。
いつから、と思うが自分が気づかなかっただけで最初からいたのだろう。
困ったように頭を掻いてからクラウドはユナと目線を合わせるようにしゃがみこむ。
やはりまだ慣れないのか少しおびえた表情で見上げる。



「おはよう、セリアはどこかわかるか?」
「…お店。」



あっち、と指差すのは入ってきた扉とは違う扉。
ありがとうという意味をこめて頭を撫でてから剣を腰に差し扉へ向かう。



「行かないのか?」
「……ユナ、お留守番。」



出る前にユナに問いかけるが、フルフルと首を振って奥の部屋へ入ってしまった。
案内してもらおうと思っていたが無理強いするのも悪くクラウドは扉を開けた。
開けた先は活気付いた街だった。
道行く人の表情は明るく、笑っていた。



「あらあ、おはようクラウド?もう動いても大丈夫なの?」



扉を出てすぐ横にセリアはいた。
木箱を持とうとしている体勢でクラウドに声をかける。



「ああ、おはよう。もう平気。」
「よかったわ、あの後また気を失っちゃって心配したのよ。」
「すまない。」
「いいのいいの、気にしないでゆっくりしていって。
むしろずっといてくれてもかまわないわ。」



目の保養になるし、と笑いかけて木箱を持ち上げる。
クラウドはその箱を取り肩に担ぐ。
ずっしりとした重みのあるそれは女性には辛いだろう。
驚いて取り返そうとするセリアに何のことはないと首を振る。



「それくらい私が運ぶわよ!」
「いい、泊めてもらってるんだからこれくらいはしないと。」
「でも…。」
「どこに運べばいい?」
「…こっちのお店よ。」



いかにも不服ですと頬を膨らませながら先導する姿に笑みが漏れた。
自分を見つけてくれたのがセリアでよかった。



「あ…。」
「なによ?」



クラウドの声にセリアは拗ねたまま振り返る。



「セリア、ありがとう。」



伝えていなかったからとセリアの目を見て言う。
セリアは少しの間呆然としていたが、その後耳まで真っ赤になった。



「っ、ええい!この女の敵め!」
「えっ!?何で?」
「何でもよ!」



これだから顔がいい男は…、とぶつぶつと赤い頬を手で隠しながら聞こえないようにつぶやくセリア。
その隣でなにかまずいことをしたのか、と悩むクラウド。
二人で並びながら店へと向かった。







シリアスは続きませんでした。

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