第一部
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そのうちジャーファルが他の八人将たちに頼んだのか、攫われていた人たちの家族が宿へやってきた。
クラウドもまたエティの店へとユナを迎えにいった。
「セリアー!!!」
「ユナ!」
宿に来た瞬間セリアに抱きつき泣き出した。
セリアも抱きしめて涙を流す。
「ありがとう、おにいちゃ。ありがとう。」
「どういたしまして。」
顔をあげてクラウドに笑いかけた。
その頭を撫でて、涙を拭ってやる。
しばらくセリアに抱きついていたが、すぐに眠ってしまった。
そしてセリアはユナを抱いたまま家へと帰ることになった。
「クラウドはどうする?」
「オレは…。」
「クラウドは、オレと王宮だ!」
「は!?」
「約束してたんだよ、解決した祝勝会だ!」
クラウドの肩を抱いて言い切った。
そんな約束はしていない。
これぽっちもした覚えはない。
何を、とシンドバッドを見るが有無を言わせない眼がクラウドを刺す。
「そうなの、じゃあ私たちは帰るわね。」
「…おやすみ。」
ユナとセリアの頭を撫でてクラウドは言う。
おやすみなさい、とセリアは宿を出て行った。
乗り気ではないクラウドの腕を引き、シンドバッドは王宮へと移動する。
逃げ出してもすぐ捕まえられるようジャーファルはその長い袖の下に眷属器を構えていた。
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クラウドがつれてこられた部屋は謁見の間。
王座の横には八人将がそろっていて、シンドバッドも王座に座る。
祝勝会という雰囲気ではない。
むしろ今から尋問でも始まるかの様だった。
「探るようなことはしないんじゃなかったのか?」
「あの時とは状況が変わってね。」
「何も話したくない。」
「そうはいかない、この国の王として不安要素は取り除かなくては。」
話してもらうよ、と人の良い笑顔を見せる。
クラウドは目を瞑って息を吐く。
異世界など信じてもらえるわけがない。
だからといって黙ってはいられない。
「何が聞きたい?」
昼間にも言った言葉。
「それは、聞けば教えてくれるということか?」
「さあ。」
シンドバッドの質問に答えたクラウドに厳しい視線を向ける八対の目。
軽く手を振ってその目を止めさせてシンドバッドは言う。
「君は何者だい?」
「オレは何でも屋、だ。」
「何でも屋?」
「ああ、といってももっぱらデリバリーが仕事だけどな。」
何でも屋、クラウドがトモダチとしたの最後の約束だった。
「君は、どうやってシンドリアへ来た?」
どうやって、それはクラウドにもわからない。
教会の泉に引き込まれて気づいたらここにいた。
黙り込んだクラウドにシンドバッドは説明する。
「ここはある結界が張ってあってな、不法入国はすぐにわかるんだ。
けれどクラウドの入国記録はない。
誰にも知られずこの国に入る方法はないんだよ。」
「でもオレはここにいる。」
「そう、それが問題なんだよ。」
シンドバッドには敵対している組織がある。
侵入を防ぐために張られた結界だ。不備があっては困る。
クラウドを疑っているわけではない。
ただ、教えてほしい。
「オレに教えれることは何もない。」
「っ…ジャーファル!」
「止めないでください、シン。」
クラウドの言葉が終わるや否やジャーファルの武器がクラウドの体を捕らえる。
ギリギリと音を立てて締め付ける紐に眉をひそめる。
あわてて止めようとするシンドバッドを一目見てからクラウドを睨む。
ジャーファルだって信じていないわけではない。
それでもこうして疑うのが王を守る者の勤めだと思っている。
自分の王を守るため自分は最後まで疑う必要がある。たとえそれが恩人だろうと何であろうと許してはならない。
「すべて話してもらいますよ。私はシンのように優しくはありません。」
シンが疑うことができないのなら、強く尋問することができないのなら。
私がそれを行いましょう。
キャラがつかめない…。