第一部

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夕飯も食べ終えクラウドは部屋に戻った。
先ほどまで騒がしい食堂にいたせいか誰もいない部屋の静けさがはっきりとわかる。



「クラウド。」
「また勝手に出てきて。」
「そなたに伝えたいことがあるのじゃ。」



冷気をまとわせて現れたシヴァにクラウドはため息を吐く。
しかし真剣な表情に口を閉じた。
クラウドもまたずっとシヴァに聞きたいことがあった。



「そなたとて知っておろう?われらは術士に呼ばれなければ出ることができなかった。」
「そうだな。」



召喚獣が術士を無視して勝手に出てくるなど聞いたことがない。
本来、召喚獣を呼び出すのに大量の魔力を消費する。たとえ慣れ親しんだシヴァであろうと何度も呼び出すのは身体に負担がかかる。



「しかしここに来たら妾は呼ばれずとも外に出れた。
そなたから必要最低限の魔力を貰っての。」
「呼ばれるより魔力の消費が少ないのか?」
「そう…しかし最低限しか魔力がないから、姿を現すことしかできない。」
「つまり?」
「妾が自分で出てきたときは魔法が使えない。」



召喚獣の魔法の源は術士の魔力だ。
その術士の意に反して出てきたときは魔力の供給ができないということか。
クラウドが無言で考えていればその頬に触れシヴァは悲しそうに言った。



「だからの、そなたが危険な状態でも出ることはできても…呼ばれなければ力は使えぬ。
妾は求めてくれなければ何もできないのじゃ。」



昨夜、シヴァもマテリアを介してあの状況を見ていた。
自分の主が傷つくのを見ていることしかできなかった。
たかだか一介の召還獣が何を言うかと笑われるかもしれない。
自分は仲間ではない、人ですらない。けれど助けを求めて欲しかった。
大切な主の助けになりたかった。



「…すまない。」



悲痛なシヴァの表情にクラウドは謝った。
自分がここまで想われているとは思いもしなかった。
そこはクラウドの悪い癖だ。
自分に向けられる感情に気付かない。
強くあろうとしていつしか周りを頼ることがなくなった。
前にティファやマリンに怒られ、なんとかましにはなっていたがまだ治ってはいなかったようだ。



「無理にとは言わぬ、今朝呼んでくれただけでも嬉しかった。
われらにとって必要とされることが至上の喜びなのじゃ。」



シヴァもそれがわかっているから強くは言わない。



「忘れることなかれ、妾はいつでも待っておるぞ。」
「ああ、ありがとう。」
「それではな。」



最後にクラウドの額に口づけてシヴァは帰っていった。
また静寂に戻った部屋の中でクラウドは呟く。



「本当に守られてばかりだな。」



ずっとずっと守られてきた。
頼ることを知らない自分に頼っても良いんだと言ってくれた。
今回、シヴァに言われなければ思い出さなかったかもしれない。
こんなことがマリンに知られればまた怒られてしまうな、とクラウドは思った。



「頼って…みるか。」



思い立ってクラウドは部屋を出た。
話も途中で終わってしまったし、セフィロスのことも話せていない。
シンドバッドはもう執務室にいるだろうと考え執務室を探して歩き始めた。
しかしわからず早々に歩いていた人に道を聞いた。



「ここか。」



扉を前にしてノックしようと手を上げるが一度手を下げてしまう。
頼るとは思ったが仕事中だと迷惑ではないか。
ぐずぐず考え込んでいると扉が内側から開いた。



「ん?クラウドか?」



出てきたのはシンドバッド。
目的の人物だったがいざ目の前にするとなんと切り出せばいいか迷う。
とりあえず。



「話を聞いてほしい。」



クラウドの言葉にシンドバッドは少し驚いたようだがすぐに笑顔になって中に引き入れた。





主人公がうじうじしてる。

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