三度目かよ!?

□桃色の彼女
2ページ/5ページ




一度目の人生はいたって平凡だった。
普通の女子高生である日、交通事故でその命を引き取った。

二度目の人生は非凡だった。幼い頃両親を殺され、その仇に育てられた。
やがて暗殺者として生きていたがある友達のおかげで足を洗い、犯罪者を捕らえる掃除屋になった。
しかし、幼い頃からの身体の酷使、度重なる重度の怪我。そしてナノマシンによる身体の変異でもう身体はぼろぼろだった。

死が迫っているのは自分でも理解していたし、最後まで自由でいたいと仲間から離れ一人で死を待っていた。
かつて不吉の象徴とまで言われた野良猫は眠るように息を引き取った。



…はずだったんだけどなぁ。



+++



とある病院で桃井家の娘が生まれた。



「お母さん、元気な女の子ですよ!」
「ああっ私の…私達のかわいい子。」



母親と同じ桃色の髪をした女の子。
医師の手から母親に渡されて、母親は抱きしめていた。
幾人もの目に見つめられ赤ん坊は産声を上げた。



「おぎゃぁぁああ!!(三度目かよぉぉおお!!)」



あやねは渾身の突っ込みのつもりだったが、口から出たのは産声だった。



【入学しました。】



誕生から約12年、桃井あやね。今日から中学生です。
え?なんでいきなり時間が飛んでいるかって?
オレにあの羞恥の日々を語れと?
不吉の象徴とまで恐れられたこのオレに授乳やオムツ替えのことを話せと!?



「あやねちゃん、笑ってー。写真を撮るわよ。」



入学式前、中学生の校門で親に写真を撮られ続けて早10分。
そろそろ頬が引きつりそうだ。



「ほらほらまだ撮るわよ!」
「なぁ、もういい?疲れた。」
「もうあやねちゃん!あなたは女の子なのよ?
いい加減口調直しなさい。」



めっ、と頭に手を乗せられる。
ちなみに前世のことは両親に話した。
気味悪がられるかと思ったが、両親は信じてくれた。
むしろ異様に早い成長の納得がいったようだ。
あなたは私達の子供よ、と抱きしめてくれ、不覚にも泣いてしまった。

それからの溺愛ぶりは凄かった。



「母さん、もう時間だから!遅刻すんぞ。」
「まぁ、大変!早く行かなきゃ。」



母親の背を叩いて校舎へと向かわせた。



+++



入学式も終わり、校長の長い長い話に爆睡していたあやねは欠伸をこぼした。
親はもう既に帰っている。
新入生は部活の案内のために残っていた。
部活に入りたいものはこの日から入部届けが出せるのだ。
しかしあやねは、入るつもりはなく帰ろうとしていたがその頭をぱしりと叩くやつがいた。



「って…何すんだよ。」
「あー?あやねが眠たそうなのが悪いんだよ。でっかい欠伸をして。
それよりちょっと付き合えよ。」



叩いたのは小学校からの付き合いである青峰だ。
小学校のときに寄ったストリートバスケで出会ったのに始まり、その後同じクラスが続いた。

前世で男だったあやねと野生児な青峰。
波長が合ったようで二人はすぐに仲良くなった。



「どこに行くんだよ。オレはミルク飲みてーんだけど。」
「相変わらず男勝りだな。入部届けだすんだよ。」
「入部?ああ、バスケか。」
「おう。ここのバスケの強豪校なんだz…っと。わりぃ。」



青峰が嬉しそうに言っていれば誰かにぶつかっていた。
しかし振り返った先で、青峰はぶつかった相手を見つけられなかった。



「あ、あれ…?」
「あそこだよ、おーいそこの水色の髪の子。
悪いね、うちのバカが。」
「えっ…?大丈夫です。」
「悪いな、ほんと。」



あやねが変わりにぶつかった相手に謝った。



「おいあやね、バカって何だよ。」
「あー?バカはバカだろ?」
「そういうお前こそバカじゃねえか!」
「九九もできない奴に言われたくねーよ!」
「漢字もまともに読めないバカが何言ってんだよ!」



青峰とあやねは低レベルな言い合いを始めて、既にぶつかった少年のことは頭になかった。
だからその少年、黒子がずっとあやねを見ていたことに気づかなかった。



「あの人…僕のこと、見えていた?」



影の薄さを自覚していた。
隣を歩いていても、ぶつかっても気づかれないことが多い。それでもあやねは気づいたことに驚いた。

黒子がそんなことを考えているとは露も知らず、あやねと青峰の言い争いは続いていた。



「てかバスケ部行くんじゃないのかよ。」
「お前が渋ってんだろ!」
「ミルクをくれるんなら、行ってやる。」
「おー、ミルクくらい奢ってやるよ。」
「言ったな、絶対だからな。」
「よしじゃあ行くぞ?」
「おー。」



二人してこぶしを突き上げてバスケ部のブースへと向かった。




次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ