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□特別な朝
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14日の朝。
いつもと違う特別な空気。
少し緊張して、制服に袖を通す。
鏡の前に立つと、目の下にできたくまと、寝不足で血色の悪い顔。
「仕方ないか…」
昨日は夜遅くまで、日付が変わったあとも一人キッチンに立っていた。
料理は得意なほうだが、今年は大好きな恋人のために作るということで、いつもの倍気合いと手間をかけて作っていたのだ。
味見は何度もしたから、食べれないことはない、はず。
自分の疲れきった顔とは反対に、綺麗にラッピングされたチョコレート。
甘いものがあまり得意でない赤司くんのために、甘さを控えたガトーショコラを焼いた。
そっと鞄にしまい、家を出るとそこには愛しい赤色の彼。
「ごめん!…待たせちゃった?」
そういって駆け寄ると、今来たところだよ、と綺麗な目を細めて笑った。
つられて微笑んでしまう。
「目の下…酷い隈だね?」
ふいに赤司くんが私の顔に触れた。
「あ、あのね…今日、バレンタインだから、赤司くんに、チョコを食べてもらいたくて。良かったら貰って…?」
そういって遠慮がちに袋を取り出すと、さっきよりも目を細めて、嬉しそうに笑う赤司くん。
「ありがとう。 これのために隈まで作ってくれたのかい?」
「そう、なるね…」
「いおりからチョコを貰えるなんて、朝から幸せな気分だよ」
「私も、赤司くんに喜んでもらえて幸せ」
なんて、顔を見合わせて笑う。
寒い冬の朝を、手を繋いで歩く。
二人だけの特別な朝。