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□幸せの魔法
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帰ろうとベンチから立ち上がると、部室のドアをノックする音。


先輩が忘れ物をとりにきたのかな?などと思い、ドアをあけると、


「赤司くん…なんで」

慌てて泣き腫らした顔を隠す。

顔を見たらまた、泣きたくなってきてしまった。


そんな私を、赤司くんは黙って抱き締めた。


「今日はいつもより早く終わったんだ。テニス部の部室のほうを見たらまだ明かりが着いていたからいおりが居るかもしれないと思って。」

「辛いことがあったのか、いおり」


嗚咽で喋れない私に、赤司くんが優しく話しかけてくれる。


なにも言っていないのに、私の欲しい言葉も、温もりもくれる。

「っ赤司くん、会いたかった…よ、嫌なことが、あったの…でも、赤司くん忙しいか、ら…」

途切れ途切れで伝える。

私を抱き締める赤司くんの力が少し強くなった。


「俺も、すごくいおりに会いたかった。迷惑なんかじゃないんだよいおり。辛いことがあったら話してくれた方が嬉しい。俺はお前の彼氏だからね。」

あぁ、赤司くんってすごいなぁ。

さっきまで辛くて痛くて仕方なかったのに。

私をすぐに元気にしてくれるんだ。


思わず微笑む。

「赤司くんありがとう」


「別に礼を言われるようなことはしていないよ。それに、いおりの笑顔は、俺の支えだからね。」


ほらまたそうやって、私を笑顔にする言葉。



赤司くんがくれる、幸せの魔法。
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